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熊本市での腐肉を誘引餌としたトラップによる甲虫類捕獲の季節的消長
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上田明良 (森林総研九州)、大原昌宏 |
腐肉食性のシデムシ科と糞虫類は森林環境のすぐれた指標種群であるが,捕獲消長の調査はほとんど行われていない。そこで,熊本市立田山において,魚肉を誘引餌としたピットフォールトラップと吊り下げ式トラップを常緑広葉樹二次林と広葉樹新植地に設置して,甲虫類全体の捕獲消長を調べた。全体の捕獲数は二次林のピットフォールでもっとも多かった。季節的消長は,分類群別では,シデムシ科が秋に,糞虫類が夏にもっとも多く,後者は初夏と秋にもピークがあった。このほか,オサムシ科とチビシデムシ科は晩秋,ガムシ科は初夏から夏,エンマムシ科は初夏,ハネカクシ科は夏と秋,ケシキスイ科は春と秋に多かった。主要種別では,コエンマムシが初夏に,ツヤエンマコガネが初夏と秋に,アカバハネカクシ,マメダルマコガネとコブマルエンマコガネが夏に,ヨツボシモンシデムシ,センチコガネ,クロマルエンマコガネとフトカドエンマコガネが秋に多かった。 |
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デイゴヒメコバチQuadrastichus erythrinaeとその天敵デイゴカタビロコバチEurytoma erythrinaeの目合い別防虫ネットへの透過性
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安田慶次
(沖縄県森研)、春日大輔、清水優子、喜友名朝次 |
沖縄県県花であるデイゴはデイゴヒメコバチ(Qe)の侵入により開花率が著しく低下した。その対策としてアフリカ原産の天敵デイゴカタビロコバチ(Ee)を防除に用いるべく、調査を行っているが、増殖方法や防除効果を室内及び野外網室で行う際に、使用するネットの目合いが重要である。そこで目合い別の透過性を室内で検討した。まず、QeとEeの成虫の頭幅を測定した。頭幅は最小のQe♂の0.22 mmから最大Ee♀の0.76 mmの幅が認められた。さらに、虫こぶから成虫が羽化脱出する際に生じる脱出口を測定したところ、Qeの0.20 mmからEeの0.88 mm(雌雄不明)の幅が認められた。それらを考慮して、供試する目合いを選択した。供試試験は透明のアクリル管(長さ12.5 cm,内径1.4 cm)に目合い1.0,0.6,0.4,0.2 cmのポリエチレン製のネットを張り、ネットを張らない容器を対照区として試験区を設けた。その結果Qeで0.2 mm以下、Eeでは0.4 mm以下の目合いであれば透過出来ないことが明らかとなった。
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スギ・ヒノキ人工林における伐採前後のアシナガバチ相の比較
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小坂 肇
(森林総研九州)、高畑義啓、牧野俊一 |
熊本県菊池市のスギ・ヒノキ人工林で伐採・再造林前後の4年間(2011-2014年)にベイトトラップを用いてアシナガバチ類を捕獲し、種構成や捕獲数を比較した。伐採前にはムホンホソアシナガバチとヒメホソアシナガバチが捕獲され、伐採後はこれら2種に加えてコアシナガバチも捕獲された。明瞭なピークは見られなかったが、アシナガバチ類は夏季と晩秋に多く捕獲される傾向にあった。アシナガバチ類の捕獲総数は伐採後に急増した。アシナガバチ類は一般に陽の当たるところによく巣を作り、チョウやガの幼虫を主に狩って幼虫の餌にするとされる。伐採後には若齢の広葉樹等が繁茂し、それらを食べるチョウ目幼虫も見られた。これらから、伐採はアシナガバチ類に対して営巣と捕食にとって好適な場を提供するものと考えられ、その結果、捕獲種数や捕獲総数が増えたと思われた。下刈りなど伐採後の保育を行う場合、アシナガバチ類による刺傷被害に十分注意する必要がある。 |
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大隅地区の木材市場に飛来する甲虫類の捕獲調査
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畑邦彦
(鹿大農)、畠中雅之、松浦玄樹、藤田紘史郎、久保慎也、曽根晃一 |
南九州の木材市場における穿孔性甲虫の飛来状況を明らかにするために、トラップ及び直接捕獲による甲虫類の捕獲調査を行った。調査は鹿児島県大隅地区の3つの木材市場で行った。トラップ捕獲では誘引剤なしの衝突板トラップを用い、2014年~2016年の3・4月~12月に継続的に捕獲を行った。直接捕獲は2015年と2016年の同時期に各市場内を1時間程度歩き回り捕獲を行った。トラップ捕獲では63科383種1774個体、直接捕獲では16科32種206個体の甲虫類が捕獲された。穿孔性害虫はトラップ捕獲で7科22種188個体、直接捕獲で5科10種171個体が捕獲された。捕獲数が多かった穿孔性害虫はオオゾウムシ、ヒメスギカミキリ、ハンノキキクイムシ、トドマツオオキクイムシであった。オオゾウムシは7月をピークに4月から11月まで長期間捕獲された。ヒメスギカミキリは4~5月に集中的に捕獲された。ハンノキキクイムシは秋期、トドマツオオキクイムシは春期に捕獲数が多かった。 |