607
鹿児島県におけるカシノナガキクイムシ被害林分の経過調査
久保慎也
(鹿児島県森技セ)
カシノナガキクイムシPlatypus quercivorus は,ナラ・シイ・カシ類の集団枯損の原因となっている糸状菌Raffaelea quercivoraの媒介者であり,ブナ科樹木に萎凋症状を引き起こす。鹿児島県本土では,近年マテバシイやコジイなど常緑樹の葉が萎凋し集団的に枯損する被害が断続的に発生しており,2007年と2010年には県内各地で被害が大発生した。そのほとんどの被害木にはカシナガの穿入孔が確認されているが,この被害木が後年どのように変化するかを追跡し報告されたものは少ない。そこで,被害が発生したマテバシイ主体の林分とコジイ主体の林分において,単木毎に枯損等の動態調査を行ったので,その結果を報告する。

608
九州で発生したミズナラのナラ枯れ被害について
後藤秀章
(森林総研九州)、上田明良、高畑義啓
カシノナガキクイムシ(以下、カシナガ)が媒介するブナ科樹木萎凋病菌によるナラ類などの枯損(以下、ナラ枯れ)は、九州でも断続的に被害が発生している。九州のナラ枯れ被害の多くは常緑樹で発生するが、落葉樹であるコナラ、ミズナラなどでも発生することがある。2015年より霧島屋久国立公園内の高千穂河原周辺において、ミズナラに枯損が発生した。九州では珍しいミズナラの集団枯損であることから、同地域の常緑樹の被害とその特徴を比較する目的で、2016年11月より、ミズナラの毎木調査などを行った。調査対象とした215本のうち、約25%の54本に当年のカシナガによる穿入がみられた。また、約22%にあたる47本で枝枯れなどの異常が観察され、このうちカシナガの穿入が見られた当年の被害木と考えられるものは39本であった。当年の被害木のうち、完全に林冠が枯損したものは19本であり、残りは部分的な被害に止まっていた。

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宮崎県におけるナラ枯れ被害木の枯損形態とその要因
末吉智秀
(宮大農)、平田令子、伊藤哲
 近年、カシノナガキクイムシを媒介昆虫としたナラ枯れ被害が全国的に発生している。2015年には宮崎県内でもシイ・カシ類で被害が発生した。演者らは、宮崎県内に位置する田野町と綾町の2か所において被害の実態調査を行ってきた。その結果、どちらの調査地においても、穿入後枯れなかった個体(穿入健全木)、樹冠の一部に枯れが生じたが生残している個体(部分枯損木)、および樹冠の殆どの葉が萎れ枯死したと考えられる個体(全枯損木)の3種の被害形態がみられることが明らかとなった。今後の被害拡大を防ぐためには、これら3種の被害形態でのカシノナガキクイムシやナラ菌の繁殖状況の違いを確認し、穿入個体の中で駆除する対象を明確にする必要がある。そこで本研究では、穿入木の伐倒を行い、材の変色および孔道の発達と被害形態との関係を検討することを目的とした。そして、穿入健全木と部分枯損木が今後のナラ枯れ被害の発生源となるのか考察する。 "