503
次世代スギ精英樹(精英樹F1)の発根特性について
江島淳
(佐賀県林試)
佐賀県では、スギ精英樹同士を1960年代に交配させた実生個体のなかから、1次選抜した109クローンをF1選抜クローン試験林(以下、試験林)として整備し、その後、試験林内の20年生時調査データをもとに2次選抜した6クローンを次世代スギ精英樹として位置付けている。 これまで試験林から山取りした穂を用いて発根試験していたものを、今回は県内へ2020年の普及開始に向けて整備が進みつつある採穂園から採穂した穂により、生産現場に近い穂の状態で発根特性を把握することを目的に試験を実施した。試験内容は、2018年3月20日に挿し付けた6クローン(サンプル総数360本:各クローン30本×2セット)について、挿し付け期間100日と118日の2期間を設定し、クローン別の発根率及び発根量について比較検証した。その際、発根量については、画像解析ソフトimageJを利用し、発根量とカルス量の定量化について試みた結果を報告する。

504
スギミニ穂の秋期密閉さし試験
姫野早和
(大分県農研林業)
スギさし木苗の増産に関する技術の一つとして、従来からの採穂対象である40cmの穂木よりも小型の穂木(以下、ミニ穂)を利用するものがある。ミニ穂は育苗に長期間を要すると考えられるが、現在は通常の穂木と同程度の期間で出荷規格に到達させる技術が求められている。そこで本試験では農業用ビニールによる秋期の密閉さしに着目し、密閉さしにおける加温・加湿効果の調査およびミニ穂のさし付け適期の検討を行った。採穂およびさし付けは9月下旬~10月下旬の間に3回行い、穂長は20cmと25cmに調整した。さし付け後は4月上旬までビニールで密閉し、密閉中は密閉内外の外気温湿度、土中温度を継続的に測定した。6月下旬に掘り取り、枯損数や発根状態を確認した後、苗畑に床替えした。今回の発表では密閉による温湿度の変化やさし付け時期の違いによる床替え時の発根状態の差についてとりまとめた内容を報告する。

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水耕栽培を利用して発根誘導したスギ挿し穂の土壌植栽後の成長量と根系の変化
尾上竜一
(九大院生物資源環境)、 栗田学、吉村和也、 田村美帆、渡辺敦史
一般に林木におけるさし付けには、土壌を利用する。土壌にさし付けた場合、堀り取り作業の労力、掘り取り時の根の損傷が発生することに加え、発根を確認することが出来ないため、一定期間養生する必要性があるなどの生産現場において不利な面が存在する。土壌を利用しないさし付け環境、例えば、土壌の代わりに水を利用した場合には、発根の確認が容易となり、根の損傷や労力も著しく軽減できると考えられる。しかし、水中で発根した根は土での発根と比較して細根の発達が未熟でその後の成長に影響する可能性があるばかりでなく、土壌へ移植後に乾燥ストレスが発生する可能性が考えられる。本研究では、土壌環境で発根させたすべての根を切除したクローン苗を利用して水耕栽培を行い、改めて発根させた。発根後、これらの個体は土壌へ移植し、土壌環境で維持した個体と成長量の比較や根系の変化について評価した。

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光・温度環境がスギ挿し木発根に与える影響
吉村知也
(九州大学大学院生物資源環境科学府)、栗田学、尾上竜一、渡辺敦史
親のクローン特性を引き継ぐ個体を大量に作り出すことの出来る挿し木は、伝統的かつ効率的な増殖法である。しかし挿し木発根の成否に関する環境要因やメカニズムの理解はあまり進んでいない。赤色光、青色光、またそれらの混合色光をスギ挿し穂に照射した結果、各光質におけるスギ挿し木の発根率には差異が認められた。本研究では、野外において受光区と寒冷紗による遮光区を設け、光量を長期的・段階的に制限して発根率評価を行った。さらに挿し木に影響を与える環境要因として温度にも注目し20℃、25℃、30℃それぞれの条件下でスギ挿し穂を生育し発根率評価を行った。以上より様々な処理条件とスギ挿し木発根率の結果から環境要因、特に光や温度がスギ挿し木に与える影響について考察する。