510
コウヨウザンにおける応力波伝播速度の林分内および林分間の変異
藤澤義武
(鹿大農)、口脇信人、牛島竜希、永井純一、大塚次郎、磯田圭也、近藤禎二
スギ、ヒノキを補完する造林材料として、同じヒノキ科で成長に優れ、萌芽も可能なコウヨウザンに注目が集まっている。筆者らは構造材利用を念頭においた材質の評価を進めてきており、樹幹の剛性を比較する指標値として応力波伝搬速度がコウヨウザンでも有効であることを示すとともに、これによって構造用材としてスギと同等かむしろヒノキに近い性能であることを示した。本報告では、コウヨウザンの材質優良個体を選抜するための基盤情報として、九州から東海地方に至る4林分(53~58年生)で測定した応力波伝搬速度値について、林分内および林分間の変異を検討した。

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スギ心材含水率の非破壊的測定手法の検討
倉原雄二
(森林総研林育セ九州)、武津英太郎、栗田学、久保田正裕
スギは個体間の心材含水率のばらつきが大きい。心材含水率の高い個体は乾燥に要するコストが大きいため、製材品としての利用では含水率が低い個体が求められる。心材含水率のばらつきはクローン内では小さいことから育種による改良が期待される。心材含水率の測定は円盤採取による試料で行われることが一般的であるが、伐倒をともなうことから多くの個体を測定することは難しい。非破壊的な測定手法として横打撃共振法、個体の損傷の少ない手法として成長錐コア採取法がある。心材含水率の育種的改良には多数の個体の測定が必要であり、より簡易な手法の適用が望まれる。今回、同一クローンを用いて横打撃共振法および成長錐コア採取法を九州育種場内の育種素材保存園(熊本県合志市)で、成長錐コア採取法と円盤採取法を吉無田国有林内の吉無田集植所(熊本県御船町)で行い測定手法および植栽場所間の比較検討を行ったので報告する。

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九州育種基本区におけるスギ第一世代精英樹のジベレリン着花特性について
栗田学
(森総研林育セ九州)、武津英太郎、倉原雄二、佐藤省治、大塚次郎、竹田宣明、松永孝治、倉本哲嗣、久保田正裕
育林コストの削減や伐期の短縮による林業の成長産業化を視野に、成長に優れた特定母樹やエリートツリー等の活用が進められている。一方で、スギ花粉症は国民の約3割が罹病するなど社会問題化しており、成長性、着花性(少花粉・無花粉)等、複数の特性において優れた品種の開発が求められている。現在、より効果的な優良品種作出手法として、ゲノム育種技術の開発が進められており、それに用いるための大規模なDNA情報とあわせて表現型情報の取得を進めている。今回、九州育種基本区のスギ育種素材(第一世代精英樹)において、ジベレリン処理による着花特性情報を取得したので報告する。また、これまでに取得されている他の特性(成長性、発根特性等)との関連性についても解析し、あわせて議論を行う。