生理・防災・利用・立地

201 過熱水蒸気処理竹粉残渣のカリウム濃度低減方法の検討
〇高山夏音(福岡農林試資源セ),太田 剛,友清昇太,井手 治 本県の民間企業では,丸竹(モウソウチク)を過熱水蒸気(Super Heated Steam,以下SHS)処理後に粉砕し,プラスチックとの溶融成形による複合化が可能な竹微粉末を製造するプラントの事業化を進めている。SHS竹粉製造時には残渣が発生し,その有効活用としては燃料化が考えられる。しかし,SHS竹粉残渣はカリウム濃度が高いため,燃料として利用する場合にはクリンカの発生が問題となる。そこで,簡易なカリウム濃度低減方法の確立を目的として,SHS竹粉残渣中のカリウムを洗浄して低減化する方法について検討した。試験で比較した処理は溶液種類,溶液量,処理温度,処理時間,振とうの有無,洗浄回数である。その結果,20倍希釈したSHS竹酢液(丸竹のSHS処理で発生する副産物)をSHS竹粉残渣の5倍量,60℃,2時間,振とうなし,洗浄回数1回の処理条件で浸漬し,ろ過により溶液を分離することでSHS竹粉残渣中のカリウム濃度を0.62%から0.16%に低減できることが明らかになった。

202 高精度DEMによる林道の表面浸食予測
〇櫻井 倫(宮大農),假屋雅敬 近年,航空機レーザー等による高精度DEMの利用が広がっている。森林内の表面流の予測,ひいては林道の路面浸食が生じやすい箇所の予測にも利用可能と考えられるが,一方で10mメッシュを用いた路面への流入の予測結果は実際の流入量と開きがあったとの報告もある。そこで,高精度のDEMを用いて予測した路面への流入量と実際の流入量との関係を検討した。 宮崎大学田野フィールドにおいて,路面上に浸食が認められた箇所18地点の浸食の断面積と,1mメッシュのDEMから得られた同地点の路面上の流水量(集水面積)を比較した。その結果,浸食断面積と集水面積との相関係数は0.6409(p<0.01)と,高い相関が得られた。また,10mメッシュで同様の比較を行ったところ,r=-0.2372となり,過去の報告と同様,関係がみられなかった。これより,高精度DEMであれば路面浸食の予測に利用可能であることが示された。

501 低標高域に生育するブナ成木の健全度について(予備的調査)
〇作田 耕太郎(九大 農),板橋 幸司 ブナは,鹿児島県の高隈山系から北海道の黒松内まで日本全国に幅広く存在する冷温帯の標徴種であるが,近年の分布域変動シミュレーションから,年平均気温の上昇によって全国的にその分布域が狭まることが予見されている。  ブナに関する研究は,冷温帯が広く存在する本州のブナ自生地を中心に古くから多数行われているが,平均気温上昇の影響は低緯度地方から顕在化する可能性が高いため,九州のブナの生育状況についても検討を進める必要がある。しかしながら,スギなどの針葉樹人工林化が進んでいる九州において,ブナは高標高域にのみ残存していることもあり,ブナを対象とした研究例自体があまり多くない。その中でも,九州最北部の分布域である三郡山系を対象とした報告は稀である。  本研究では,三郡山系のブナ成木のうち最低標高域で生育する個体を対象として,健全度指標である葉のSPAD値の一生育期間での測定結果について報告する。

901 令和2年7月豪雨における九州内の山地災害発生状況
〇黒川潮(森林総研九州),北村兼三,壁谷直記 令和2年7月豪雨では,7月3 日から7月8日にかけて日本付近に停滞した前線の影響で,暖かく非常に湿った空気が継続して流れ込み,九州北部地方を中心に広い範囲で大雨となった。7 月3日から8日までの総降水量は,九州南部,九州北部地方で1,000mmを超えるところがあった。アメダスデータにおいて24,48,72 時間降水量が観測史上1位の値を超え,7 月の月降水量平年値の2倍から3倍となる地点があるなど記録的な大雨となった。この豪雨による九州での山地災害発生状況に関して,ヘリコプターによる上空からの調査および現地調査を実施した。熊本県および大分県の一部を飛行した結果からは,熊本県山鹿市,小国町,芦北町,大分県日田市,九重町において,数十ヶ所の山腹崩壊が確認できた。一方で熊本県央,阿蘇地域での山腹崩壊箇所数は少なかった。また,山腹崩壊に伴い土砂が流動化して,長距離流下している場所が多数確認できた。

902 露出値(Ev)を用いた個葉の光透過性に関する現地試験
〇壁谷 直記(森林総研九州支所),清水 晃,新垣 拓也,古堅 公,春日 大輔,漢那 賢作,清水 貴範,飯田 真一 写真撮影に用いる露出値(Ev)を用いた樹冠構造の推定に向けた予備試験として沖縄県北部の西銘岳森林気象露場において個葉の光透過性に関する現地試験を行った。ペンタックス社製露出計を三脚に鉛直に固定し,露場周辺に自生する9樹種(スダジイ,トキワガキ,コバンモチ,ヒメユズリハ,イヌビワ,カクレミノ,イジュ,アカメガシワ,リュウキュウマツ)の供試葉を収集し,葉枚数と露出値の関係を記録した。葉を15枚(樹種によっては12枚)まで変化させて露出値を記録したところ,樹種により枚数による露出値の低下傾向に違いが見られた。

1001 伐採後4年のヒノキ根の腐朽の進行と強度低下
〇酒井佳美(森林総研九州),多田泰之,臼田寿生,和多田友宏,野口享太郎,小林政広 平成29年の九州北部豪雨において,十分に根系発達した森林でも山腹崩壊が発生したことで,改めて森林の根系発達と土砂災害防止機能が注目されることとなった。近年は森林資源の充実に伴い伐採面積が拡大しており伐根の土壌の支持機能評価も求められている。そこで筆者らは伐根の土壌支持機能への腐朽の影響を解明することを目的に,作業道の法面に露出する根を利用して,根の腐朽の進行と強度低下について調査検討したので報告する。調査した根は伐採後4年のヒノキ,27本である。伐採後の経過時間が等しい根であるが,腐朽の進行,および強度に大きなばらつきがあった。現地での引き抜き抵抗は根の直径が大きくなるにつれ高くなる傾向は見られたが,生木の根に比べると引き抜き抵抗は低下していた。大きな空洞ができるほどの腐朽が進行した根は引き抜き抵抗が著しく低下していた。

1002 年平均気温および年間降水量がセンダンの生長に及ぼす影響:文献データを用いた解析
〇森大喜(森林総研九州),横尾謙一郎,鳥山淳平,酒井佳美 国産早生樹として期待が高まっているセンダン(Melia azedarach)について,英文誌の文献レビューを行い,気象条件(年平均気温および年間降水量)がセンダンの生長に及ぼす影響について解析を行った。Google scholarを用いてキーワード検索(Melia azedarach" DBH age OR year-old OR "years old" OR precipitation)を行った。検索条件に適合した769件の文献のうち,調査地の年間降水量と年平均気温のデータが入手可能かつセンダンの林齢およびDBHを報告しているものを解析に用いた。得られた文献は,インドを中心にアジア地域で報告されたものが多かった。なお,灌漑を行っているものについては解析から除外した。各調査地の「場所のランダム効果」を仮定した混合モデルによって,気象条件とセンダン生長量の関係を解析した。"