林産
801 | サカキの省力化栽培技術の開発 |
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〇河内眞子(鹿児島県森技セ) | サカキは神棚や神事に利用され年間を通じて需要が高い。しかしながら,生産者の高齢化等により管理不十分な生産林が増加し,生産量は減少している。このため,国産品は慢性的な供給不足で流通量の多くを中国産が占め,市場からは品質の良い国産品の安定的な供給が望まれている。 そこで,一般的に行われている挿し穂(10~15cm)による育苗に比べ,育苗の期間短縮や省力化を期待できる長尺のさし穂や人工培地によるさし木を試みたので,その結果について報告する。 |
802 | 乾タケノコの低コスト生産に関する研究-穂先タケノコの有効利用法の検討- |
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〇増田一弘(宮崎林技セ) | 近年,収穫時期を過ぎたタケノコ(穂先タケノコ)を利用する動きが全国的にも注目を浴びており,特に輸入メンマの代替品として「乾タケノコ」の生産が急増してきている。
穂先タケノコは,収穫手間がかからず,無駄なく有効に利用できるなどの利点がある。そこで,収穫期を過ぎたタケノコの稈高と利用できる穂先部との関係性について調査したところ,効率的な収穫タイミングがあることが判明した。また,併せて乾タケノコの有効な乾燥法についての検討も行ったのでその結果を報告する。 |
803 | 気候変動がシイタケ子実体の発生等へ及ぼす影響(Ⅳ) |
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〇酒井 倫子(宮崎県林技セ) | 環境省,文部科学省,気象庁が共同で作成したレポートでは,現在のまま温暖化が進行すると日本の平均気温は21世紀末には約2.1から4℃上昇すると予測されており,原木シイタケ栽培への影響が懸念されている。
そこで既報告Ⅰ,Ⅱでは,平年気温から2℃あるいは4℃上昇させた高温区にほだ木(中低温性品種A,低中温性品種B)を設置して子実体の収穫期間や発生量を調査した。その結果,平年気温の対照区と比べて2℃よりも4℃上昇させた高温区で収穫期間が短く,発生量も少なくなったと報告を行ったところである。
既報告Ⅲでは品種を変えて(中低温性品種C,低温性品種D),平年気温から4℃上昇させたところ,品種Cでは発生量が同程度だったが,品種Dでは減少したため,品種によって高温による影響の度合いが異なると考えられた。
今回はⅢと同じ品種を用いて平年気温から2℃上昇させた場合について調査を行ったので,その結果を報告する。 |
804 | 乾シイタケ原木栽培における2才木への発生操作の効果について |
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宮本亮平 | 乾シイタケ原木栽培において,2才木からの発生量が減少傾向にある。特に低温性品種の減少率が大きい。
通常,1才木は発生時期の前に,伏せ込み場所からほだ場に移動させるため,移動刺激が加わる。2才木は,ほだ場に置いた状態で管理し,降雨や温度低下による刺激で発生を待つのが通常である。しかし,近年の暖冬の影響で,温度低下による刺激等が弱く,発生量が減少していると考えられる。そこで,2才木の単収を増加させる方法を検討した。
シイタケの発生量を増加させるためには,散水やほだ倒し等の発生操作がある。今回,2才木のほだ木を用いて,散水,ほだ倒し,打木処理により単収を増加させる方法を検討した。
その結果,散水と打木処理を合わせて加えることにより発生量が増加し,その時期は1回目の発生のピーク前に行うことがより効果的である。打木箇所は木口のみよりも樹皮部分に行う方が効果があるという結果が得られたので報告する。 |
805 | シイタケ原木栽培における特定防除資材を用いた病原菌対策に関する研究IV-食酢を施用したときのシイタケ子実体収量への影響- |
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〇宮崎和弘(森林総研九州),木下晃彦(森林総研九州),福井陸夫(全菌協),倉島治(科博) ,大林夏湖(東大院) ,伊藤元己(東大院),陶山佳久(東北大院) | シイタケの原木栽培において,これまでの試験により特定防除資材の一種である食酢が,Hypocrea属菌の防除に有効と考えられるデータが得られてきた。しかしながら,現場で使用するためには,シイタケ栽培,特に子実体の収量に負の影響を与えないことを確認する必要がある。そのため,シイタケ栽培中の原木に,定期的に食酢の噴霧を行い,栽培における収量への影響を調べたところ,明確な収量減少を起こさないことを確認した。また,特定防除資材である次亜塩素酸水のHypocrea属菌培養菌糸への影響を試験したところ,次亜塩素酸水(400ppm)には,Hypocrea属菌の培養菌糸を死滅させる効果がないことを確認した。また,対峙培養試験によるシイタケ栽培品種の耐病性検定試験を行い,供試した品種のTrichoderma属菌に対する耐病性評価の結果を得た。 |
806 | クヌギ資源を利用したヌメリツバタケ栽培 |
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新田 剛(宮崎県林技セ) | ヌメリツバタケはタマバリタケ科ヌメリツバタケ属のきのこで,夏から秋,ブナや広葉樹の倒木及び枯れ木に発生する。傘の表面は淡灰褐色~ほとんど白色で強い粘性がある。宮崎県内では「モチナバ」と呼ぶ地域があり,柄を切り取って汁物に入れて食されるなど,味のよい野生きのこであるが,食べられることを知る人は意外に少ない。また,現在のところ,人工栽培の成功事例は報告されていない。今回,県内のブナ林で採取された菌株を用い,県内に豊富に存在しシイタケ原木として使用されるクヌギ資源と地域遺伝資源の利用を図るため,栽培試験を行ったので途中経過を報告する。 |