301 樹幹形の効率的かつ安定的な定量化指標の開発
○井上昭夫(近大農),佐藤太裕,島弘幸 樹幹形を効率的かつ安定的に定量するための指標を開発した。この指標は,既報(Inoue 2006)において提案した「樹幹形の平方根則」における比例定数そのものであり,Kunzeの形状指数とほぼ比例関係にある。マダケ属3種のデータに対し,この指標を適用した結果,(1)稈形の種間変異を適切に表現できること,(2)形状指数よりも種内変異が小さく,より少ないサンプルで種ごとの稈形を定量できることがわかった。この指標を形数に基づく細り指数(Taper Index based on Form-Factor; TIFF)と名付けた。本研究の一部は,令和3年度近畿大学農学部特別研究費および科研費(21K05690,18H03818)の助成により実施した。

302 全国スケールでのコミュニティ林業の森林保全効果:文献レビューに基づいた検討
〇太田みわ(九大生資環),太田徹志,溝上展也 熱帯地域の森林減少・劣化は深刻な問題であり、これらを緩和するためにも効果的な保全政策を明らかにする必要がある。コミュニティ林業(CF)は地域住民が森林を管理する手法であり、森林保全と地域住民の生計向上の両面から近年注目が集まっている。CFがもたらす森林保全効果について、これまで多くの研究が行われてきたものの、特定の地域に存在するCFのみに着目した事例的な研究、もしくは世界中の事例研究を集めて分析したメタ解析が大半である。それゆえ、国家がCFを導入した場合、全国レベルで森林保全効果が働くのかは未だ十分に解析されていない。以上のことから本研究では熱帯地域において、CFがもたらす森林保全効果を全国スケールで評価した研究を中心に論文をレビューすることで最近の知見を整理した。またレビューを踏まえて、今後求められる研究の方向性についても議論する予定である。

303 Landsat時系列衛星画像を用いた森林被覆および森林変化要因分類-ミャンマー全土を対象に-
〇西田圭佑(九大生資環),太田徹志,志水克人,溝上展也 現在、熱帯地域を中心に森林減少・劣化が問題となっている。森林減少・劣化を引き起こす要因は木材生産、農地開発、インフラ開発のように多様であり、これらの要因を時間的・空間的に特定することが重要である。しかし、地上調査によって森林減少・劣化の要因を広域かつ長期間把握することは現実的に困難である。そこで本研究ではLandsat時系列衛星画像を用いることで広域・長期間スケールでの森林変化要因の定量化を目的とした。対象地はミャンマー全土レベル、対象期間は2001年から2020年とし、年ごとに森林変化量を求めることとした。Landsat時系列衛星画像から植生指数を得た後LandTrendrおよびCCDCを用いた特徴量を求めた。得られた特徴量に対してランダムフォレストを用いることで森林被覆および森林変化要因を分類した。当日の発表では、分類結果ならびに分類精度を報告する予定である。

304 森林変化推定におけるGoogle Earth Engine活用手法の整理
○寺田愛理(九大生資環),太田徹志,溝上展也 斜面崩壊や森林の伐採といった森林変化を広域かつ長期的にモニタリングする手法として衛星画像の活用が考えられる。広域を対象とした長期的な衛星画像の解析では,膨大なデータを処理するため,データを保存するための大容量メディアが必要であり,かつ通常のコンピュータでは解析に極めて長い時間が求められていた。しかし近年,Google Earth Engine(GEE)に代表されるクラウドベースの地理空間解析により,保存容量や解析時間への制約が軽減されている。しかしながら,GEEに関する日本語の文献は乏しく,森林変化推定に特化した資料は更に少ない。そこで本発表では,GEEを用いた森林変化推定を行う方法を整理し,解析を行う上での基礎資料の作成を目指す。

305 リサイズ処理した空撮写真により作成したオルソ画像の位置ずれと面積差の検証
〇鎌田政諒(長農セ) ドローンで撮影された空中写真によりオルソ画像を作成する際、広範囲をカバーするためには数十枚から数百枚の写真が必要となる。ドローンのカメラは高画質であるため1枚当たりの写真容量が大きく、解析に多くの時間を要し、場合によっては処理落ちすることがある。また、作成したオルソ画像の容量も大きいため、GIS等で管理する際に動作が重くなるうえ、データの蓄積によりPCの保存領域の圧迫も懸念される。そこで、解析時間の低減とオルソ画像の軽量化を目的として、あらかじめ空中写真をリサイズ処理し容量を落としてから解析に供し、オルソ画像の作成を試みた。作成したオルソ画像の位置ずれや面積、解析時間、容量を無処理のオルソ画像と比較したため、その結果を報告する。

306 ドローンレーザデータによるスギ人工林の樹高計測
〇加治佐剛(鹿大農),森脇省吾,寺岡行雄 ドローン技術の発達により、ドローンレーザが普及し始めている。森林域では航空レーザ計測が主流であるが、ドローンレーザは即時性、詳細性が期待されている。詳細な点群データは従来の森林計測で対象としている項目以上の情報が得られると考えられる。本研究では、ドローンレーザで計測される点群データを用いて、スギ人工林の樹高計測を行い、その精度評価および取得データの特徴について考察する。

307 下刈り対象スギ幼齢林におけるUAV画像を用いた雑草木群落高の推定
〇二神慶多(鹿大農),加治佐剛,寺岡行雄 育林にかかる費用のうち再造林初期費用が占める割合は約7割であり、再造林の低コスト化・省力化に向けた取組が整備されている。森林整備事業において、従来では事業の申請を受けた後に下刈り施工地にて現地調査が必要だが、2020年4月よりGISデータやUAV等の画像を申請や検査に活用すれば、現地調査の省略が可能となった。しかしながら、雑草木群落高の測定についての研究事例は少ない。そこで本研究では、対象地を鹿児島県霧島市の植栽後3年のスギ幼齢林とし、下刈りが行われる前後でUAV(Phantom4Pro)を用いて撮影を行い、SfMソフトウェアであるPix4Dmapperを使用してDSMとオルソ画像を作成して、雑草木の群落高を推定することを目的とした。

308 森林域における二時期のデジタル航空写真から得られたDSM差分画像解析による樹冠高の経年変化推定
〇黒木俊太朗(鹿大農),加治佐剛,寺岡行雄 近年、スマート林業として、ICT等の先進技術の積極的な導入を目指す中で、航空写真やドローン写真等のリモートセンシング技術の活用は、森林という広大かつ危険性を含む土地を管理する際に、必要不可欠な課題だと思われる。現在、南九州では森林の伐採活動が活発になっており、伐採地の把握や管理が重要となっている。しかし、現地調査等で伐採状況の把握を行うと、多大な労力と時間を要する問題がある。そこで本研究では、二時期の航空写真から得られた森林の施業前後のDSMを比較して差分画像から施業状況を検出することを目的とした画像解析を行った。その際に、検出精度を地形的な視点で考察し、発表では、二時期のDSM差分画像からの伐採、成長検出精度について報告する。

309 国土地理院5m解像度DEMを用いた地位指数推定モデルの改良
〇光田靖(宮大農) 地位指数はゾーニングを行う上で、最も重要な要素の一つである。市町村森林整備計画においては、木材生産機能維持増進森林と様々な種類の公益的機能別施業森林へゾーニングすることが求められる。また、森林経営管理制度においては、経営管理を委託された森林について、市町村は林業経営に適した森林と適さない森林を区分しなければならない。このような行政における意思決定において、地位指数は重要な意味を持つ。発表者はDEMを用いたデジタル地形解析から求められる地形指標を説明変数とする地位指数推定モデルを開発してきた。その中でDEMの解像度が重要であることが明らかとなっている。近年、航空レーザー測量にもとづく5 m解像度DEMが利用できる範囲が広がっている。そこで、宮崎大学田野演習林で開発したスギ地位指数推定モデルを、5 m解像度DEMを用いて改良することを試みた。

310 宮崎大学田野演習林スギ人工林における航空写真DSMを用いた地位指数マッピング手法の開発
〇宮原史浩(宮大農) これまで、地位指数分布図を作成する際には、地位指数と環境要因との関係から統計モデルを開発していた。これには、40年生のスギの樹高が必要であり、樹幹解析で40年生の樹高を推定することは可能であるが、使用できるデータに制限がある。本研究では、航空写真から生成される表面高(DSM)を用いて広域的に地位指数を面的に推定する方法を開発すること目的する。宮崎大学田野演習林のスギ林を対象に、LiDAR計測由来の国土地理院5 m解像度地盤高(DTM)と宮崎県撮影航空写真DSM(解像度50 cm)から林冠高(DCHM、解像度50 cm)を計算した。DCHMを5 m解像度で局所最大値抽出したものを樹高ラスタとみなし、同解像度で森林簿から林齢ラスタを作成した。樹高ラスタと林齢ラスタから、樹高成長曲線モデルを媒介して地位指数分布を推定した。本研究により面的な計測値に基づいた面的な地位推定が可能になり、より正確な地位推定が可能になると期待される。

311 地形因子を用いた沖縄県広葉樹人工林の適地の判定
○井口朝道(沖森研セ),久高梢子,伊藤俊輔,玉城雅範 沖縄県を代表する広葉樹であるイジュ人工林においては、同一小班内においても生長量に大きな差が確認される。そこで、適地での造林を推進するため、地形因子が生長量に及ぼす影響について明らかにすることを目的に研究を実施した。調査区は、沖縄本島北部地域に位置する国頭村内の県営林に3カ所設置し、毎木調査を行った。地形因子として、1mメッシュのDEMから算出した尾根谷度と露出度を用いて、イジュ上層木樹高との関係について評価した。併せて、決定木分析により、地形因子を用いた適地の判定を試みたので報告する。

312 列状間伐地におけるUAV撮影画像からの間伐本数の判定
○上野綾(上野物産株式会社),重田行洋,加治佐剛,寺岡行雄 2020年4月より植付・下刈り・間伐等の森林整備事業の申請と検査にUAVの活用が可能となり、リモートセンシング技術の活用が進んでいる。間伐の場合は間伐前と間伐後のオルソ画像を比較して伐採状況を確認することになっているが、未だ間伐地におけるUAVの実際の活用事例は少なく普及するまでには至っていない。そこで本研究では、UAV撮影画像の情報による間伐実施状況の明確化を目的に、どのような撮影方法や画像解析をすることで間伐木を確認できるのか、またその課題点などを明らかにする。研究対象地は鹿児島大学農学部付属高隈演習林である。研究会では、列状間伐地における伐採状況をUAV空撮画像と実際の地上調査とで比較判定した結果について報告する。

313 DEM解像度の違いによる路網設計支援ソフトでの森林作業道線形案の違い
○寺岡行雄(鹿大農),吉永悠太郎,内原浩之,牧野耕輔,加治佐剛 森林作業道の設計は現地での個人の勘や経験に頼る部分が大きく、時間と労力を要してきた。近年はFRD(Forest Road Designer)という路網設計支援ソフトが開発され、DEM(数値標高モデル)データを用いて林業用路網の設計を自動で行うことが出来るようなっている。また、航空レーザ計測の普及により、高精度のDEMも利用できるようになってきている。そこで、DEM解像度の違い(0.5m、5m、10m)によるFRDでの森林作業道の線形案の違いを検討した。

314 920MHz帯電波のスギ単木による遮断の影響
〇池田希(鹿大農),加治佐剛,北原健太郎,寺岡行雄 森林内の作業における労働災害が多い中、通信環境の確保は林業従事者の安全性の向上につながると考えられる。森林内での通信環境を確保するためには、樹木による電波の遮断が電波減衰に与える影響を明らかにする必要がある。しかし、森林内での電波減衰に関する研究は少ない。そこで、本研究ではスギ単木が920MHz帯電波の遮断に与える影響を明らかにすることを目的とした。送信機と受信機間に1本のスギが電波を遮断し、遮断の程度が変わるように送受信機を移動させて電波強度を測定した。なお、その際の測定間隔は20mとした。また、対象測定として、電波を遮断する樹木が無い条件でも同様の測定位置で実験を行った。本実験の結果を発表する予定である。

315 木口画像の輪郭特徴量を用いた丸太の個体識別
〇水流聖文(鹿大農),加治佐剛,寺岡行雄 木材において、違法伐採でないこと、持続可能な経営管理を行っている森林から生産されたこと、トレーサビリティがとれることが求められている。これらの証明にはQRコードやRFIDタグを用いた手法が考案されてきたが、貼り付けなどによる作業の煩雑化やコストの増加といった課題が分かっている。そこでQRコードやRFIDタグの代わりに丸太固有の情報で個体識別を行うことが出来れば、上記の課題を解決することが出来ると考えた。本研究の目的は、木口画像から得られる個体特有の情報を用いて丸太の個体識別を検討したので、その内容について発表する。

316 ICTを活用した丸太材積の測定方法について
○都賢太郎(九森局) 近年、森林経営管理制度等により林業は転換期を迎え、国産材の生産量を大幅に増加させることを目標にしています。そこで、増加する国産材をいかに流通させていくかという課題があります。今後の原木流通の増加を見据え、ICTを活用したスマート林業を実現することが必要です。本研究では、スマートフォン等用の「AI丸太検知くん」とカメラとパソコンを利用する「検知丸」の2種類のICTを活用し、従来の方法である「手検知」と比較して検証を試みました。なお、材積の誤差については林野庁の基準から5%以内であれば問題なしと判断します。調査の結果、材積の合致率はAI丸太検知くんが99.1%、検知丸が101.1%となりました。本研究で、材積の誤差は基準内となることがわかり、検知時間についてもICTの方が早くなることがわかりました。これらのことから、さらに精度の高い検証を行った後、林業業界全体へと普及させ、木材流通のデジタル化を検討すべきだと考えます。