1001 宮崎県におけるメッシュ農業気象データを用いた原木シイタケへの影響予測
新田剛(宮崎県林技セ) 気候変動や地球温暖化傾向により、自然環境を活かして行う原木シイタケ栽培では、気温上昇による病害菌の発生や子実体の発生量減少、品質低下等の影響が生じる可能性がある。近年は、アメダス等の気象観測データをWeb上で比較的容易に利用できるようになり、農業現場においても気象条件を考慮して作物の生育予測や病害虫の発生予測に活用することが期待されている。そこで今回は、本件の原木シイタケ栽培への影響予測について、農研機構の「メッシュ農業気象データ」の利用について検討したので報告する。

1002 2才木への散水と打木操作によるシイタケの発生量の変化
〇生野柾大(大分県きのこ),宮本亮平 原木シイタケの生産現場から2才木ほだ木からの発生量が以前と比較して減少しているとの情報が寄せられ、特に低温性品種で、発生量の減少が見られた。その対応策の一つとして、散水やほだ木をハンマー等で叩く打木操作による発生操作を検討した。10月から11月まで、1月から3月までのそれぞれの期間において、異なる時期に2才木へ散水と樹脂製ハンマーによる打木操作を行い、発生量を調査した。その結果、低温性品種2品種において、発生操作後に発生量が多くなり、2才木の発生量の増加につながる可能性が考えられた。

1003 乾シイタケ保存期間中のビタミンD減少抑制方法の検討
○山下和久(大分きのこ) 乾シイタケに紫外線を照射するとビタミンD含有量が増加することがわかっているが、過去の試験で3ヶ月常温で保存した場合、ビタミンD含有量が45%程度減少するケースが見られた。機能性の栄養成分を強調表示する場合、許容差の範囲内にある一定の値または下限値及び上限値によって表示することとなっている。ビタミンDの許容差は+50%~-20%と規定されていることから、現状でビタミンDを強調表示する商品の販売は不可能である。そこで酸素や水蒸気の透過が少ない高性能の包装資材を使用することでビタミンDの減少を抑えることができないか検討を行ったので、その結果を報告する。

1004 モウソウチク林における竹材生産のための帯状伐採の有効性について
濵田肇次(鹿森技セ) 竹材生産量日本一の鹿児島県では,県内竹材生産量の約7割をパルプ用竹チップとして利用している。近年では,セルロースナノファイバーや発電用チップ等,新たなマテリアル利用への取組が進んできている一方,人工林への侵入竹や放置竹林の問題も抱えており,森林整備と竹資源の有効活用の両面で,効率的な竹材生産技術が求められている。そこで,平均胸高直径が11.7cmの放置されていたモウソウチク林で,方形試験区(20m×60m)を設け,伐竹業者4名によるチェーンソーでの10m幅・5m幅の帯状伐採と抜き切り伐採の功程調査を行い,労働生産性を比較した。また,伐採後1年目のタケノコ発生調査を行い,竹林の回復状況を比較したので報告する。

1005 ヤブツバキ個体毎の開花と結実
○溝口哲生(長農セ),森口直哉 ヤブツバキは開花期間が長く、結実量に個体差がある。年による豊凶差も大きいとされている。そのため、生産者からは生産量の安定と増加が求められている。しかし、ヤブツバキ個体毎に開花から結実までの調査をした事例はない。そこで今回、長崎県農林技術開発センター内に植栽してあるヤブツバキ個体毎の時期別の開花量やその結実量を調査したので報告する。

1006 萌芽更新を利用したサカキの新たな栽培方法
河内眞子(鹿森技C) サカキは神棚や神事に利用され年間を通じて需要が高く,鹿児島県は全国2位の生産量を誇っている。しかしながら,生産者の高齢化や病害虫の発生により管理不十分な生産林が増加している。また,現場では横枝の過剰な収穫により下枝高が2mを越えている場合も多く,生産者の多くは林内で脚立や高枝切り鋏を駆使し収穫している。そこで,収穫や薬剤散布の作業性向上を目指し,萌芽更新を利用した新たな栽培方法を試みた。今回,林内に植栽されたサカキ90本を高さ60cmで台伐りしたところ,供試木からは下枝の有無に関わらず全て萌芽枝が発生した。萌芽枝がどのように発生し成長するのか,これまでに得られた知見について報告する。

1007 コゴミ(クサソテツ)の新たな栽培の可能性-夏コゴミ栽培への取組-
○増田一弘(宮崎県林技セ) コゴミは、クサソテツ属シダ類に属し、全国の湿気のある草地や林の中などに生育する多年草で、代表的な春の山菜として人気がある。産地の多くは東北地方を中心とするが、宮崎県内の一部でも生産されており、土地を選ばず、病虫害に強く、また管理作業が軽作業で高齢者等でも容易であることなどから、中山間地域での所得向上、耕作放棄地等対策に繋がる作目として期待される。一般的に、コゴミの露地栽培での収穫時期は3月~4月とされているが、更なる生産性を高めるために夏季の萌芽(夏コゴミ)利用の可能性について検討してみた。今回は、夏季の萌芽状況と収穫による翌春への影響等を調査したので報告する。