101 | 拡大造林期に人々はどこに木を植えたか?~1960年世界農林業センサスを用いた九州地方の地域分析~ |
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〇上野竜大生(九大農),佐藤宣,藤原敬大,藤岡悠一郎 | 戦後造林された人工林は、今日主伐時期を迎えており、伐採跡地の最適な土地利用に関しての議論が必要となっている。議論する上で植栽前の状況の把握が重要である。本研究では、1960年世界農林業センサスを用いて、市区町村単位で九州地方において、造林が実施された土地種類の分析を試みた。分析に用いる市区町村の行政区画は、昭和大合併が実施される前の明治行政村を引き継ぐ1950年のものであり、九州で1338市区町村である。1960年農林業センサスの各種類別土地造林面積(天然林伐採跡地・人工林伐採跡地・山林以外)のデータを用いて、1950年の各市区町村単位でそれぞれ造林割合(=各種類別土地造林面積/総造林面積)を求めた。造林割合を元に、九州地方の各市区町村を天然林転換型、山林以外転換型、再造林型、混合型の4つのグループに類型化した。本研究は現在の素材生産や天然更新などの土地利用を考察するにあたっての基礎研究となることが期待される。 |
102 | 15世紀~19世紀の琉球列島における地域内移入種の導入履歴の復元-造林,養蚕の歴史に着目して- |
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〇安井瞭(土浦日大高,東大新領域),岡本透 | 人々は様々な用途を見込み、植物を地域外から持ち込んできた。これらの植物には移入先の土地で逸出して移入種として定着した樹木(以下、移入樹種とする)も存在する。沖縄県における移入樹種には生態系に悪影響を及ぼしているギンネムなどが著名であるが、デイゴなど文化的・歴史的に重要な位置を占めている樹木も存在する。しかし、宮古列島におけるリュウキュウマツの事例のように本来在来種であると考えられていた樹木が移入種であるなど、在来種か移入種であるか不明な樹木も多い。そのため、移入樹種を理解するには文化的な立ち位置のみならず、移入樹種の認定や導入された経緯を知る必要がある。一方で松・桑など葉の形が特徴的であり、特別な用途がある樹木であれば過去の文書資料内の記述や絵図内の描写などから復元することが可能である。そのため、本研究では文書資料や絵図資料が現存する島々に着目し過去の移入樹種の導入履歴を明らかにした。 |
103 | 熊本県におけるセンダン植林の動向 |
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○横田康裕(森林総研九州) | センダンは国産早生樹の一つとして注目されている一方で、その植林地拡大はそれほど簡単ではないとも言われている。そこで、本研究では、センダン植林を促進・抑制する社会経済的因子の解明に取り組むべく、既存のセンダン植林事例について、植林経緯や植林者の特徴を明らかにすることを目的とする。センダン植林者には、大きく、センダンの可能性を実証しようとする篤林家、耕作放棄地・予定地を抱えその有効活用を検討する農家、多様な土地活用を検討する大面積土地所有者、将来的な資源確保を目的とする森林所有者・素材生産事業者の4者がみられた。当初は、篤林家の取り組みが先行したが、面積や植林回数が限定的な者が多かった。その後、行政の普及活動や行政・民間企業による補助により、農家・大面積土地所有者・森林所有者・素材生産事業者の植林事例が増え、最近は、第3段階として、その一部で継続的な植林活動を検討する動きがみられるようになった。 |
104 | 徳之島におけるコーヒー生産の現状と課題 |
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○古里孝志(鹿大農),枚田邦宏,奥山洋一郎 | 世界的なコーヒーの需要量が年々増加する一方で、地球温暖化の影響によって生産量は落ち込むことが危惧されている。日本はコーヒー消費大国であり、その多くが輸入によって賄われている。将来、世界のコーヒー価格高騰及び日本国内の消費量を踏まえると、国産コーヒーの生産には大きな可能性があると考えられる。現在、国内ではコーヒーベルトと呼ばれるコーヒー生産に適した地域に比較的近い沖縄や奄美大島などの地域で生産が行われている。また、徳之島ではコーヒー生産者30名により、生産者会が作られている。そして、2017年から徳之島において国産コーヒーの普及を目的に「徳之島コーヒー生産支援プロジェクト」が進行中で、2023年からの本格販売を目指し活動中である。本研究では徳之島コーヒー生産者会を対象に、徳之島コーヒーの現状や課題を把握し、今後の発展の可能性について考察する。 |
105 | 奄美大島における民間モニタリング活動の取り組みと今後の可能性について |
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〇Wang Jing(鹿大農),枚田邦宏,奥山洋一郎 | 世界自然遺産登録推薦地である「奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島」は、令和3年7月に、世界自然遺産登録が正式に決定となった。これらの地域の顕著な普遍的価値を登録後にも維持していくため、その価値の構成である希少種・固有種の現状に応じて保護策の策定が重要である。このため、現状を把握できるように、モニタリングを実施する必要がある。一方、この4つの島はいずれも有人島で、固有種・希少種の生息環境と地域住民の生活の場が近接する。また、長期間のモニタリング調査の場合、継続的な自然情報の収集活動は、研究者の力だけでは不十分である。したがって、地域住民のモニタリングへの積極的な参加・協力も重要である。そこで、本発表は、奄美大島における規模が一番大きい保護団体「奄美野鳥の会」の発会してからの経緯、調査活動、要望活動を整理・分析し、住民のモニタリング活動の取り組みと今後研究者・行政への協力について検討する。 |
106 | 動物園における屠体給餌の実施状況と課題 |
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〇万田拓海(鹿大農),枚田邦宏,奥山洋一郎 | 近年、獣害が問題視されており、環境省と農林水産省は「抜本的な鳥獣捕獲強化対策」を共同で取りまとめ、「ニホンジカ、イノシシの個体数を10年後(令和5年度)までに半減」することを当面の捕獲目標とした。しかし、捕獲された動物の食肉化は流通面をはじめとする様々な問題により進んでいない。このような現状に対して、肉の効率利用と飼育下にある動物達のストレス軽減の効果期待ができる屠体給餌(とたいきゅうじ)に着目してきた。本研究では屠体給餌を全国で普及していくために必要な条件、実現する方法の解明を目的とする。具体的には全国の動物園を対象とする調査書を作成、配布、収集を行う。対象となる動物園は屠体給餌の実施状況により「実施している」、「実施していた」、「したことがない」の3つに分け、屠体給餌実施に関わる問題点を指摘する。 |
107 | 豪雨被災集落における景観の再構築-形成 -福岡県朝倉市平榎集落を事例に- |
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〇原田佳生(九大生資環),佐藤宣子,藤原敬大,市野瀬愛 | 近年深刻な豪雨災害が多発しており、地域の産業や暮らしへ甚大な被害を及ぼしているほか、地域景観にも多大な影響を与えている。森林は中山間地域における集落のアイデンティティーとも言える地域景観を形成する重要な要素である。被災地の景観の修復には多くの人材や予算が要求されるほか、長期的な管理も必要となる。一方で、高齢化や過疎化により多くの農山村のレジリエンスは弱まっている。福岡県朝倉市にある平榎集落では「平成29年7月九州北部豪雨」によって、被災後の世帯数は被災前のおよそ半数となる19戸に減少したほか、地域景観も大きく損なわれた。その後の復興過程において、集落の住民により結成された復興委員会が中心となって「見晴台」を設置し、地域景観の再構築が行われている。本研究では、平榎集落を対象に聞き取り調査や話し合い、見晴台での作業の参加を行い、「見晴台」設置に至るまでの合意形成や外部人材との連携、予算の確保などについて記録した。本発表では、その結果と課題について報告する。 |
108 | 緑の雇用研修生の満足度調査からみる労働環境の現状 |
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○大西布綺(鹿大農),奥山洋一郎,枚田邦宏,上栗慎吾 | 森林資源の成熟により更なる事業量の増加が見込まれる中、林業の成長産業化と森林の適切な経営管理を一層推進する為には、新規就業者の確保・育成はもちろん、現在働いている人が継続して働けるような労働環境をつくることが重要である。その為にはまず、働く人が労働環境についてどのような点に満足し、どのような点に不満を持っているのか、現状を知る必要がある。そこで、宮崎県・鹿児島県・長崎県・愛媛県の4県の緑の雇用研修生を対象に、給料・やりがい・人間関係・勤務時間・福利厚生・体力面・安全性・自然の中で仕事をすること・事務と現場との連携の9つの項目について、満足度(不満度)を5段階で評価するアンケート調査を2019年と2020年に実施した。本稿では調査結果から地域、年齢、経営形態による満足度(不満度)の違いについて考察する。 |
109 | 林業経営体における「能力評価システム」の活用事例とその効果 |
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○上栗慎吾(鹿大院農),枚田邦宏,奥山洋一郎 | 現在、我が国の林業従事者動向は減少傾向が続いており、林業従事者の確保・定着が求められている。2003年頃から「緑の雇用」事業が始まり、新規就業者については毎年約1000人程度、同事業によって就業している。そのため、新規就業者の確保については一定の成果が現れているが、林業従事者の定着について効果的な取組等はよく分かっていない。そのような状況の中、近年「能力評価システム」という従業員の評価制度が推進されている。このシステムは従業員の業績・能力・情意を明確な基準をもって評価し、それを給与に反映させることで意欲や能力向上を図ることを目的としている。そこで、実際にこのシステムを導入して一定の成果を上げた経営体を対象に聞き取り調査を行い、その利点や今後の課題等の調査を行った。その結果に基づき「能力評価システム」が有効かどうかについて考察を行う。 |
110 | 新たな林業サービス事業体と森林所有者との関係~NPO法人ふるさと創生を事例に~ |
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〇平山智貴(九大院生資環),佐藤宣子 | 令和2年度森林・林業白書によると、私有林における森林施業は主に林家、森林組合及び民間事業体によって行われ、森林整備・管理の中心的な担い手となっている。近年、森林組合とは別に、林業サービスを提供する事業体が森林所有者に働きかけ施業の集約化や経営の受託等を行う取り組みが報告されているが、森林所有者との関係や受託の経緯を詳細に分析した研究は少ない。そこで本研究では熊本県阿蘇地域で林業サービス事業体として受託面積を拡大し、移住者を含む小規模事業体に作業発注を行っているNPO法人ふるさと創生を対象に、集約化方法と森林所有者との関係について調査を行った。調査の結果、当NPO法人は2020年度までに596名の森林所有者から受託を受け、1,912haで24つの森林経営計画を樹立していること、所有者同士の口コミや施業実績を見て所有者側からの依頼が多いこと、森林経営計画の8~9割が1次の計画終了後も再委託されていることが分かった。 |
111 | 里山広葉樹材需要拡大ワーキンググループの取組 |
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礒﨑愛永(九森局,元近中森局) | 里山林等の森林は、かつては薪炭用材の伐採や落葉の採取等を通じて、地域住民に継続的に利用されることにより維持・管理されてきました。しかし、近年里山林の利用が減少していることに伴い、幹が太く樹高の高い森林に変化し、ナラ枯れ被害の増長も懸念されています。近畿中国森林管理局では、岡山県新見市内の里山林において、丸太を生産し販売することによって、事業としての採算性やニーズを把握するとともに、伐採跡地の天然更新を検証する「里山広葉樹林活用・再生プロジェクト」に取り組んでいます。また、この取組をサポートするため管内の若手職員で構成するワーキンググループを立ち上げ、広葉樹利用の現状と課題を把握し、里山広葉樹材の需要拡大の方策を検証する活動を進めています。ワーキンググループの活動を通して、里山広葉樹材の需要を拡大するためには、川上・川中の連携が必要であるとともに、川下への情報発信が重要であると考察しました。 |
112 | 森林の木材生産機能に対する日本人の期待の変化―新聞記事の事例からー |
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吉井聖裕(鹿大農) | 森林は日本において数少ない長期的な生産が可能な天然資源であり、持続可能な管理が必要とされている。この持続的な森林管理を行うためには、森林蓄積量などの定量的な水準だけでなく、日本人が森林に期待する機能の変化という定性的な情報を考慮した森林政策が必要であると考える。本発表では、日本人が持つ木材生産機能に対する期待の変化を1995年から2020年までの新聞記事を用いて分析し、結果を報告する。類似研究として、井上真理子(1993)があるが、本発表では、この論文で対象としていない1995年以降の木材生産の減少と拡大期を扱う。方法は、はじめに、木材生産量の推移による時期区分を行う。次に、全国紙(朝日新聞)と地方紙(南日本新聞)の1995年以降の記事から木材生産に関わる記事を抽出し関係を分析する。これらの分析によって、時期区分ごとの定量的な水準と定性的な情報の関係性を考察したい。 |
113 | 南九州における木材チップ生産の現状 |
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○奥山洋一郎(鹿大農),枚田邦宏,金氣陽大 | 地球温暖化が進行する中、「再生可能エネルギー の固定価格買取制度」(FIT 制度)が 2012 年に施行 された。その結果として、国内の燃料用チップ等用材の消費量が 2014 年 192 万立米から、2018 年には 809 万立米 と大幅に増加している。一方、書籍の電子化等が進む中で、紙・ 板紙の国内需給量は直近30 年でピークを迎えた 2000 年の 31,967 千トンから 2019 年の 25,370 千トンと減少している。チップ需要の主体であった紙・板紙生産が減退する一方で、燃料用という新規需要が発生している中で、国内におけるチップ生産者はどのように対応しているのか。本研究では、南九州に立地する製紙工場と関係の深いチップ工場が状況をどのように捉えて、生産体制を転換しているのか。事業者への聞き取り調査より現状を報告する。 |
114 | 木質バイオマス発電所の燃料調達の現状と課題:日本と中国の比較を中心に |
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〇王依侖(九大生資環),藤原敬大,佐藤宣子 | 2021年4月に米国の呼びかけによって開催された気候変動リーダーズサミットでは、カーボンニュートラルの実現に向けたさまざまな目標が各国から表明された。同サミットで日本は2050年のカーボンニュートラルの実現に向けて、2030年度における温室効果ガスを2013年度から46%削減することを宣言した。また中国は2030年までに炭素排出量のピークアウトを実現し、石炭燃料発電事業を厳しく抑制することで石炭消費の伸びを大幅に減少させることを表明した。このような背景の下、これまでバイオマス燃料はカーボンニュートラルな燃料と見なされ、日本では木質バイオマス発電所の建設も盛んである。一方で、EUではバイオマス燃料をカーボンニュートラルとする見解に批判の声もあがっており、木質バイオマス燃料の一部を規制する動きもある。本報告では、日本と中国の比較を中心に、木質バイオマス発電所の燃料調達の現状と課題について報告する。 |
115 | 福島第一原発事故後におけるクヌギ原木の被災地への移出と森林組合の対応~大分県から栃木県への移出を事例に~ |
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○石原昌宗(九大院生資環),市野瀨愛,佐藤宣子 | シイタケ生産は古くから農家の収入源の一つであり、現在でも特用林産物の中で重要な位置を占めている。しかし、2011年の福島第一原発事故の影響により、北関東地域のシイタケ原木産業は壊滅的な被害を受けた。その不足を補うために林野庁は需給マッチングシステムを構築し、九州からは大分県、熊本県、宮崎県が原木を移出した。先行研究で栃木県には大分県産原木が多いことが指摘されている。本研究では大分県の森林組合がシイタケ原木をどのように供給したのか、組合事業の中での位置づけを把握することを目的とする。大分県庁、大分県森林組合連合会、原木供給を担った森林組合で資料収集と対面調査、各都道府県や林野庁のホームページから特用林産物に関するデータの集計を行なった結果、大分県では大分県森林組合連合会が事業を取りまとめていたこと、森林組合によって移出事業の位置づけが異なることが明らかとなった。 |
116 | 薩摩つげ櫛の歴史と存続 |
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〇大山恭果(鹿大農),奥山洋一,枚田邦宏 | 薩摩つげ櫛は、鹿児島伝統工芸品として指定されており、原材料につげを用いた櫛である。これは、薩摩つげ櫛生産組合の組合員によって鹿児島県伝統工芸品指定書記載の技術又は技法を用いて製作されている。昔から現在まで多くの人に利用されており、その使い心地は長い間高く評価されつづけてきた。そこで、本研究では薩摩つげ櫛の歴史と現在の生産、実態について明らかにすることを目的とする。方法としては、薩摩つげ櫛の歴史、つげ櫛の生産の現状、つげの木の木質的特徴を調査する。調査対象は、つげ櫛生産組合の生産者、組合員のツゲの木の仕入先の農家や森林組合とする。
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117 | 中国における自然体験教育の現状と発展の可能性 |
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○周子琪(鹿大農水),井倉洋二 | 中国の自然体験教育は2010年前後に急速な発展を始めた。2020年に中国自然体験教育ネットワークは2回の自然体験教育業界調査を実施した。その結果、コロナウイルスは自然体験教育機関に大きな打撃を与えた。多くの活動がキャンセルされ、自然体験教育機関の経営を圧迫し、小規模な組織では経営破たんも起きている。解決策として、一部の機関はオンライン授業を行い、政府も資金援助をしているが十分ではない。
本報告では、中国の自然体験教育の現状を紹介するとともに、日本の自然体験教育の現状と比較し、これから中国が日本の自然体験教育機関と共に発展できるかどうかを検討する。 |
118 | 日本とベトナムの環境教育の背景 |
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Nguyen Hai Dang(鹿大農水)井倉洋二 | 環境問題は一国の経済社会の発展と密接な関連があるため、環境問題がその国の発展過程を反映しているといえる。この視点から考えて、日本とベトナムの環境教育の背景について報告する。日本の経済発展と共に生じた環境問題と、それに伴って発展した環境教育の歴史、その内容や方法について整理する。そしてベトナムとの比較により、環境の考え方と教育方法など、日本との類似点と相違点などを歴史的背景の視点から明らかにしたい。そしてこれからのベトナムの環境教育の発展ために何か必要であるかを考える。 |
119 | 大学演習林における森林認証取得の取組み |
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〇小林くるみ(鹿大農),奥山洋一郎,枚田邦宏 | 森林認証制度とは持続的な森林管理を行う事業体やその森林、生産された木材を扱う加工流通企業を第三者機関が審査・認証する制度である。日本では、全世界を対象としたFSCによる認証とPEFCと相互承認を行うSGECによる認証が普及しつつあるが未だ国産認証材の流通量は少なく、東京五輪では需要に完全に対応できなかった。鹿児島県は特に森林認証の普及が進んでおらず、県内の認証林は大規模な企業の社有林のみという状況にある。公的な教育研究機関である鹿児島大学の附属演習林で認証を取得することは周辺企業への普及啓発に繋がると考えられる。本研究では、これまで森林認証を取得した大学演習林の認証取得に至る経緯や審査前後の管理・経営の変化について調査を行い、鹿児島大学附属高隈演習林における認証取得を進める上での参考とする。 |
120 | 四国地方における森林組合の「山の神」祭行事の特徴 |
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○西川希一(鹿大農),枚田邦宏,奥山洋一郎 | これまで民俗学の観点から、山の神に関する諸問題について様々な研究・考察がなされてきた。しかし現代では、伐木に関する技術革新や、林業の担い手の構成変化によって、「山の神」祭行事の様式の変化が起こっている。筆者のこれまでの研究により、全国の大学演習林において「山の神」祭行事が執り行われており、その様式に地域性があることが明らかになった。また、民間の林業事業体や国有林の森林管理署でも「山の神」祭行事が行われている。栁田(2016)の先行研究では関東地方から中国地方における森林組合の「山の神」祭行事の現状を明らかにしている。本研究では、先行研究を踏まえ、四国地方に存在する森林組を対象に調査を行い、現在執り行われている「山の神」祭行事の地域的な特徴を明らかにするとともに、他地域と四国とで、「山の神」祭行事の様式に差異があるのかを分析する。引用:栁田(2016)「職能集団としての森林組合における山の神信仰の特徴と地域性 ―関東地方から中国地方に至る地域を対象として―」東京農工大学大学院修士論文 |
121 | 全国の大学演習林における技術職員の労働力配分について |
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○芦原誠一(鹿大農),久保田勝義,奥山洋一郎,井倉洋二 | 大学の付属施設である演習林は、教育・研究を主目的として設置が義務付けられており、全国27の大学がこれを所有している。林学科等の実践的教育・研究を行うフィールドとして欠かせない存在であるが、学内における演習林の位置づけや業務内容は多様であり、その全体像が示されたことはあまりない。
筆者らはこれまでに、全国大学演習林協議会を通じて行ったアンケートをもとにして、演習林の技術系職員の年齢構成や保有資格などについて整理している。今回は、それらの成果を踏まえて、技術系職員の業務内容の類型化を試みるとともに、その労働力配分についての調査を行ったので、その結果と、大学ごとの特色などについて報告したい。 |
122 | 高隈演習林教育関係共同利用拠点における地域コミュニティ教育分野の取組 |
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○宿利原恵,井倉洋二 | 高隈演習林(以下,本演習林)は、平成26年度に文部科学省に教育関係共同利用拠点として認定された。(第一期平成26年度~30年度,第二期平成31年度~)。それ以降,本演習林の共同利用は本格化し、様々な大学等に利用され,発展的取り組みを行ってきた。第一期は4つの教育分野(1.林業教育分野,2.環境教育分野,3.防災教育分野,4.動植物教育分野)を掲げ、第二期からは地域コミュニティ分野を追加し,5つの教育分野を柱として共同利用の実習を受け入れている。地域コミュニティ分野は公開森林実習がベースとなっており,集落散策や農作業体験、宿泊、地域住民との交流会等を行ってきた。ただし、昨今の新型コロナウイルス感染症の影響を受け,令和2年度から地域コミュニティ分野のプログラムは実施が難しくなった。本報告では地域コミュニティ分野での実習の取組みを紹介するとともに,今後の地域コミュニティ分野でのプログラム発展の可能性を検討する。 |
123 | 「自伐型林業」推進市町村の施策事業の内容と使途財源―九州の自伐型林業推進の市町村を中心に― |
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○李澤宇(九大院生資環),藤原敬大,佐藤宣子 | 近年、「自伐型林業」を推進する市町村自治体が増加している。NPO法人自伐型推進協会では2021年段階で全国53の自治体と協定を結び、伐倒や作業道の作設研修を行っている。そこで本研究では、53の自治体担当者を対象に、取り組んでいる自伐型林業支援施策の内容、その財源、効果と課題についてHPの検索と自治体担当者へのアンケートを実施する。九州で自伐型林業を推進している自治体ついては施策担当者への電話インタビューによって、施策導入の背景、移住・定住の成果、抱えている問題について調査を実施する。その結果、鹿児島県出水市では、2019年度に森林環境譲与税を用いて林業就業者育成のために自伐型林業推進事業を立ち上げ、2回の研修会で15名が受講し、参加者が森林・山村多面的機能発揮交付金をつかって事業継続に繋げている等がわかった。 |
124 | 九州の過疎山村における森林環境譲与税の使途の特徴 |
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〇森永陸(九大農)佐藤宣子,藤原敬大 | 2019年度に森林環境譲与税の市町村への配分が開始されている。特に現行の「過疎法」と「山村振興法」の両方で指定されている過疎山村では、森林環境譲与税の配分基準となっている私有林面積と林業就業者数が多い一方、自主財源に乏しいため、行政における森林環境譲与税の重要度が高いことも予想される。そこで本研究は、九州における65の過疎山村自治体を対象に、森林環境譲与税の使途および自治体財政に占める重要度を明らかにすることを目的とする。本研究では、65の過疎山村自治体がホームページで公表している2019年度の森林環境譲与税の使途状況と総務省の地方財政状況調査結果(財政力指数、経常収支比率等)を収集して分析する。また、特徴のある自治体へ電話インタビューを行い、森林環境譲与税の使途目的や効果、課題について把握する。 |
125 | 森林,林業分野における行政資料のテキストマイニング分析~森林,林業基本計画と九州各県計画の特徴~ |
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○佐藤宣子(九大院農) | 近年、文書データを定量的に分析するツールとしてテキストマイニングソフトが使用されるようになっている。テキストマイニングとは、自由な形式で記述された文章を単語や文節に分割して、その出現頻度や相関関係をみるものである。そこで、本研究は、2001年森林・林業基本法以降に閣議決定された5回の森林・林業基本計画、および九州7県独自の計画書を用いて、テキストマイニング分析で各計画の特徴を把握することを目的とした。2021年度までの過去5回の森林・林業基本計画を時系列的にみると、2021年計画は以前の計画にくらべ再造林や省力化が強調され、ICT技術、気候変動など新たな単語が用いられていることがわかった。また、「次世代大分森林づくりビジョン」(2017年改訂版)と「第8次宮崎県森林・林業長期計画」(2021年)を比較すると、前者で土砂・流木災害対策が重視されているなど特徴を有していた。 |