801 | 複数観測地点の規準化降雨データを統合した確率雨量の推定手法:九州地方を例として |
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○佐藤忠道(九大院生資環),執印康裕 | 豪雨は,度々斜面崩壊や土石流,洪水を引き起こす。豪雨現象の統計的評価は水文頻度解析と呼ばれ,砂防堰堤等の水工施設の設計・管理や豪雨災害の事例分析の基礎となる。しかし,水文頻度解析に用いられる降雨データは,一般的に観測期間が短いため(気象官署は100年程度,AMeDASは40年程度),水工施設の設計・管理で必要とされる100年,200年といった再現期間の推定は外挿となり,確率水文量の精度が悪くなる。また,空間的に不均一な極端豪雨は一観測地点にあるかないかの現象である。したがって,一地点の降雨データのみでは,極端豪雨現象を広域的に評価(たとえば,地域間の比較)することはできない。これらの問題に対処するためには,地域頻度解析の一種であるStation-year methodが有効であると考える。本研究では,九州地方の気象官署23地点で観測された日雨量を規準化した上で,Station-year methodを適用し,九州地方の再現期間(確率雨量)推定式を作成したので,ここに報告する。 |
802 | 地質・地形によって異なる林地の斜面崩壊リスク-平成29年7月九州北部豪雨の事例- |
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○鶴崎幸(福岡農林試資活セ),桑野泰光,多田泰之,矢部浩,臼田寿生,和多田友宏 | 本発表では,平成29年7月九州北部豪雨で発生した斜面崩壊について,災害前後に取得された航空レーザ測量成果から得た地形情報をもとに,降雨と地質および地形に着目した解析結果について報告する。朝倉地域の代表的な地質である花崗閃緑岩と結晶片岩について,崩壊が多発し始めた雨量は,花崗閃緑岩で雨量350mm/12h以上,結晶片岩で雨量500mm/12h以上であった。また,崩壊の面積や深さについて,結晶片岩は,花崗閃緑岩と比較して1か所あたりの面積が大きく崩壊深も深いため,大規模であった。微地形表現図を用いて崩壊地の地形を判読した結果,崩壊発生リスクが高い林地は,花崗閃緑岩では0次谷に代表される凹地形が多かった一方,結晶片岩では移動体中央,側方崖,鞍部など,地すべりや断層に起因する地形が多かった。以上より,林地の斜面崩壊リスクは地質や地形によって異なることが明らかとなった。本成果は,林地における事前防災・減災対策への活用が期待される。 |
803 | 鹿北流域試験地における水の平均通過時間の推定 |
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○壁谷直記(森林総研九州),清水晃,黒川潮,酒井佳美,鳥山淳平,釣田竜也,小林政広,清水貴範,飯田真一,一柳錦平 | 降水が表流水となるまでの間の水の平均通過時間は,岩石と水との接触時間など,化学反応が進むための条件に影響を与えることから,流域内部での水質形成に関する重要な指標となる。また,流出水の平均通過時間は,汚染物質の混入,土地利用の変化などに対する流域スケールの応答を予測するために極めて有用な情報である。本研究では表層地質が結晶片岩からなる鹿北流域試験地Ⅲ号沢(流域面積:3.69ha,標高:157-255 m)において,降水から地中水,湧水,基底流出水までの一連の水文過程に沿った水の安定同位体比(δ18O,δ2H)の季節変動を調査した。さらに,これらの値からd値(d =δ2H-8×δ18O)を算出し,応答関数モデルを用いて水の平均通過時間を推定した。この調査・解析結果について,報告を行う。 |