901 | 褐色森林土の土壌型を特徴づける地形因子の比較 -九州地方と四国地方について- |
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○稲垣昌宏(森林総研九州) | 1975年の林野土壌の分類では,おもに土色,有機物の厚さ,土壌の構造などによって分類され,その根底には対象地点の潜在的な水分条件の違いが重視されている。一方で,土壌母材や地質の違いについては直接分類基準には加えられていない。本発表では,火山降下物による影響の強い九州地方と,堆積岩が主要な母材である四国地方とで,それぞれの褐色森林土の土壌型にあらわれる地形パラメータの特徴を比較した。過去の土壌調査地点の位置情報から,国土地理院基盤地図情報数値標高モデル(10m)を用いて,24種の地形パラメータの計算を行なった。計算はSAGA-GISを用いた。四国地方は凹凸度指数,谷部からの高さ,尾根からの深さ,地形位置指数,といった指数において九州より大きかった。地形湿潤指数は四国地方は九州より小さかった。これらの結果は四国地方の地形が急峻な斜面を持ち,斜面長が長い特徴を反映していた。 |
902 | 亜熱帯常緑広葉樹林における各樹種の生育適地と葉と細根の形質特性の関係 |
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○蜂須賀莉子(鹿大農),高嶋敦史,鵜川信 | 琉球諸島に成立する亜熱帯常緑広葉樹林は多くの樹種が共存し,その多様性は固有種に貴重な生息の場を提供している。多様な樹種からなる森林の成立メカニズムを理解するには,共存を可能にする各樹種の資源獲得戦略を明らかにする必要がある。樹木の生育は光資源や養水分を制限する地形の影響を受けることが知られており,尾根や谷では優占種が異なることが知られている。また,樹木の成長には,資源の吸収器官である葉と根の形質が関係しており,各樹種がどのような形質によって各環境に適応しているのかを明らかにする必要がある。そこで本研究では,琉球大学与那フィールド内の皆伐履歴のない林分に設置された4haプロットにおいて,尾根・谷に特異的に出現する樹種間で,どのように葉と細根の形質が異なるのかを明らかにすることを目的とした。本発表では,その結果を報告する。 |
903 | 九州・沖縄地方における森林土壌のメタンフラックスと理化学性の関係 |
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○高木正博(宮大農),孫力飛,梁乃申 | 森林土壌は温室効果ガスのメタンを吸収することが知られているが,その定性的かつ定量的な解明は未だ途上である。メタンの吸収強度の支配要因として,火山灰を母材とする土壌は大きい可能性が指摘されている。そこで本研究では,国内でも火山の多い地方である九州・沖縄の4つの森林においてメタンフラックスを測定し,火山灰土壌との関係を探ることを目的とした。測定にはポータブルチャンバーを用いた。2021年11月に沖縄県与那,宮崎県田野,熊本県阿蘇および福岡県糟屋の4カ所で測定した。これらのうち,田野と阿蘇が火山灰土壌のアロフェン質黒ぼく土であり,赤黄色土の与那と褐色森林土の糟屋が非火山灰土壌であった。測定の結果,吸収フラックスの多い順に,糟屋(非火山灰)=田野(火山灰)>阿蘇(火山灰)>与那(非火山灰)となった。沖縄はフラックスの平均値はほぼゼロであった。土壌の化学性及び物理性との関係を検討する。 |
904 | 下層植生除去が森林生態系機能に及ぼす影響の林種による違い |
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○原田寛人(九大生物資源),榎木勉,菱拓雄 | 下層植生の持つ生態学的機能を明らかにすることを目的とし,九州大学北海道演習林内のミズナラ林とカラマツ林において,継続的に下層植生を除去する実験を行った。本研究では,実験開始から8年経過した2021年秋に,試験地のA0層の重量と炭素・窒素濃度,および鉱質土壌の物理化学性ならびに土壌動物の個体数等を調べた。両方の森林において,A0層重量の減少がみられた。これは下層植生によるリター供給とリター流亡の抑制効果の消失が影響したためだと考えられる。また,鉱質土壌表層の容積重の増加と中型土壌動物の個体数減少も生じた。さらに,ミズナラ林では土壌炭素・窒素濃度が減少し,カラマツ林では土壌水分が減少した。土壌炭素・窒素濃度の減少はミズナラ林のみで観測されたが,これはミズナラとカラマツの資源利用や物質循環の違いに起因するものだと考えられる。 |