701 原木シイタケ生産におけるIoT技術の活用に関する調査研究
○臼井昇太(都城高専),新田剛(宮崎県林技セ) 宮崎県は,古くから原木栽培によるシイタケ生産(以下原木シイタケ)が盛んであるが,各作業に関しては,生産者の勘や経験に頼っているのが現状である.近年の気候変動や異常気象に的確に対応し,安定した生産を継続するためには,生育に影響を与える環境因子のリアルタイムでの把握と,それらを蓄積した客観的なデータから最適な生産方法を確立させる必要がある.しかしながら,生産現地である伏せ込み地やほだ場は,一般に自宅や作業場から遠距離であり,さらに複数個所存在するなど,各現地の環境因子を把握することは労力や時間が掛かり,現状の方法では困難である.今回,IoT(Internet of Things)技術を活用して点在した生産箇所の環境因子をリアルタイムで収集・蓄積する仕組み構築し,宮崎県内の6か所の生産地で実証実験を実施したので,その技術紹介と実験結果及び生産者からのフィードバック結果について報告する.

702 気候変動がシイタケ子実体の発生等へ及ぼす影響(V)
○田中沙耶香(宮崎県林技セ),酒井倫子(宮崎県) 地球温暖化が進行すると,日本の平均気温は21世紀末には1980~1999年の20年間の平均と比べて約2.1~4℃上昇すると予測されている(2016)中で,原木シイタケ栽培においては,子実体の発生要因の一つである低温刺激不足による発生量への影響が懸念される。 既報では,中温から低中温系のシイタケ4品種について,気温が平年よりも2℃,4℃と上昇することで収穫期間が短く,発生量が少なくなること,また品種間でその影響に差が生じること等について報告したところである。 今回は,前回までの4品種に低温系2品種を追加した6品種について子実体発生量等への影響についてまとめたので報告する。

703 ヤブツバキ個体毎の開花と結実~2年目の傾向について~
○前田一(長農セ),森口直哉,溝口哲生 第77回九州森林学会にて,ヤブツバキは開花期間が長く結実量に個体差があることを報告した。しかし,個体毎に開花から結実まで継続して調査をした事例はない。そこで,今回,長崎県農林技術開発センター内に植栽してあるヤブツバキ22個体の時期別の開花量及びその結実量を調査した2年目の結果について報告する。

704 原木シイタケ生産における子実体収量の時系列解析
○新田剛(宮崎県林技セ),臼井昇太(都城高専) 気候変動や温暖化傾向を背景に,自然環境下で行う原木シイタケ生産においては,病害菌の発生や子実体発生量の減少及び品質低下等の影響が危惧されており,これまで以上に気象条件を考慮した生産管理の必要性が増していると考えられる。そこで本県では,生産地点の気象データをIoT技術を利用してリアルタイムに把握するモニタリングシステムの実証実験に取り組んでいるところであり,今後,蓄積データの解析による予測や最適な生産方法を導出する取組を進めていく必要があると考えている。今回は,実証実験のフィールドとなっている生産現場から得た子実体収量データと,国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構が提供する「メッシュ農業気象データ」から得た環境データを用いて時系列解析を試みたので,その結果を報告する。

705 培養中に照射する青色LEDの強度の違いが菌床シイタケ栽培の発生に及ぼす影響
○宮本亮平 菌床シイタケ栽培において,培養中に青色LEDを照射すると,培養期間短縮等の効果があることが報告されている。今回,森XR1号と北研607号を用いて,培養中に照射する青色LEDの強度の違いが発生に及ぼす影響を調査した。 森XR1号の場合,標準培養日数より14日短くすると光量子束密度が0.2μmol/㎡・sのLEDの試験区は,光量子束密度が37μmol/㎡・sのLEDの試験区と比べて,発生量が有意に少なくなった。しかし,標準の培養日数では,その差が小さくなり,有意な差が認められなくなった。これにより,培養日数を短くする場合,弱い光よりも,強い光を用いることで,発生量が増加することが示唆された。北研607号の場合は,標準培養日数より14日短くした試験区では,いずれの試験区間で有意な差が認められなかった。標準培養日数においても,いずれの試験区間で有意な差が認められなかった。品種により光の強さに対する反応が異なることが示唆された。

706 モウソウチク林における強度抜き切り伐採の有効性について
○濵田肇次(鹿森技セ) 竹材生産量日本一の鹿児島県において,効率的な竹材生産技術に関する調査研究として,放置竹林で10m及び5m幅の帯状伐採と抜き切り伐採の区域を設定し,それぞれ功程及び回復調査を行った。1年目の試験では,5m幅帯状伐採区と抜き切り伐採区の労働生産性は変わらず,また,10m幅帯状伐採区では労働生産性は向上したものの,新竹の胸高直径が抜き切り伐採区に比べ小さくなることが確認された。2年目においては1年目を踏まえ,10m幅帯状伐採区において新竹を数本残す強度の抜き切り伐採を行ったので,その結果について報告する。

707 異なる強度の青および白色LED照射がブナシメジ形質へおよぼす影響
○工藤雅音(福岡農林試),森康浩,上田景子,高山夏音 近年,ブナシメジの生産においては省電力や長寿命の観点から,子実体発生の照明に青および白色のLEDを採用する生産者が増えている。しかし,青色のLED照射によるブナシメジの収量や子実体の形状への影響は検討されているが,白色LEDについての知見は見当たらない。そこで本研究では,青の強照射区(125μmol/m?2/s),青の弱照射区(13μmol/m?2/s),白の強照射区(843μmol/m?2/s),白の弱照射区(81μmol/m?2/s)の4試験区(照射時間12h/日)による栽培試験を行い,ブナシメジの収量や子実体形質へどのような影響の違いが見られるかを検討した。その結果,4試験区間で収量に有意な差はなかった。一方,子実体の形状について,芽数は白の強照射区で有意に少なく,菌傘の厚さについては青の強照射区で有意に厚くなった。以上から,LEDの色や照射強度の違いは,収量に影響をおよぼさないが,芽数や子実体の形状は影響を受けやすい可能性が示唆された。

708 シマハランの効率的な増殖方法の開発
○鎌田政諒(長農セ) シマハランは実生から増殖した場合,その多くが斑入りではない葉を持つ個体となることを九州森林研究No.74で報告した。このことからシマハランは無性生殖による増殖が基本になると考えられるが,従来の増殖方法では一度に大量の株を増やすことは困難であった。そこで,今回,新たなシマハランの増殖法を開発したので報告する。