101 深層学習によるテキストマイニングを用いた林業白書における情報抽出
○神野亮太(九大農) 近年,AI,具体的には深層学習をはじめとした機械学習の技術の発展,またその応用がさまざまな分野で行われている。本研究では,深層学習,機械学習の技術を応用したテキストマイニングを林業白書データに対して行うことで,自動的に有用な情報を林業白書のテキスト中から抽出できることを示す。

102 発表キャンセル


103 森林認証社有林の運営と利用に関する研究
○永利優以子(鹿大農),枚田邦宏,奥山洋一郎 地球温暖化が深刻な世界問題となる中,その原因であるCO2吸収能力を持つ森林に対する関心が高まっている。事業において二酸化炭素を排出する企業も例外ではなく,森林の機能に注目し,様々な形で森林と関わる例が出てきている。企業と森林の関わり方として,本研究では「社有林」という関わり方に注目した。本研究で対象とした「社有林」は下記の通りである。1 企業が森林を保有している,2 森林認証(FM認証)を取得している,3 上場している以上の3点を満たす企業の「社有林」(FSC取得7社,SGEC取得7社の内,重複を除いた13社を対象)について質問紙による調査を実施した。質問項目は,「社有林の概要について」「森林管理の経緯と現況」「森林認証取得の理由と効果」「今後の森林所有・管理について」であり,調査を通して企業による社有林の利用,運営の現状について明らかにする。

104 ふるさと納税返礼品における林業関連製品等の実態と効果
○山崎陸人(鹿大農),枚田邦宏,奥山洋一郎 近年ふるさと納税を利用する人々は増加しており,総務省の「ふるさと納税に関する現況調査結果」の報告によると受入額は令和3年度実績で約8,302億円,約4,447万件であった。(前年比で受入額は約1.2倍,取扱件数は約1.3倍増加)。また,ふるさと納税による住民税控除を都心部から地方に行う人口も増加していることや製品だけでなく体験型等も取り扱われるようになり,地方自治体でのふるさと納税返礼品の取り扱いは多様化している。このような状況において森林分野でも製品や体験型返礼品として出品されているが統計データとしてまとめ,分析された資料は存在せず,取り扱いの現状が不透明である。本研究ではふるさと納税サイトの分析により,林業関連返礼品のデータを取りまとめ,さらに各市町村に調査を行うことで実態を明らかにし,今後の返礼品利用の促進,林業関連のPR,木製品の需要創出の場とすることができるかということを考察する。

105 木質バイオマス発電所が森林施業に及ぼす影響:豪雪地帯と四国・九州地方の比較
○大西海(九大院生資環),箕口秀夫,藤原敬大,佐藤宣子 人工林の管理放棄が全国的な問題となっている。一方で2012年からFIT制度が施行され,木質バイオマス発電所が各地に建設され稼働している。その結果,燃料材の需要が増しており,主伐や間伐の増加など森林施業に影響を及ぼすことも予想される。そこで本研究では,豪雪地帯である新潟県及び他8県,四国3県・九州7県を対象にアンケート調査と対面での聞き取り調査を実施した。その結果,豪雪地帯は,間伐主体の施業が行われており,発電所は県外材や輸入材に依存する傾向があることが明らかになった。一方で四国・九州地方では主伐が進んでおり,国産材比率や県内出荷率が高かった。また発電所の出力規模10,000kwを境界として燃料集荷圏が大きく変化することも分かった。豪雪地帯では再造林コストが高く,主伐を推進することが難しいため,小規模分散型など木質バイオマス発電所への移行など地域の森林施業にあった発電所の建設が求められる。

106 恒続林思想は現代の持続可能な森林管理に引き継がれているか?~アルフレート・メーラー著作からの百年~
○佐藤宣子(九大院農),吉村哲彦 ドイツの林学者アレフレート・メーラーが「恒続林思想」を著して今年(2022年)で100年目を迎える。「恒続林思想」は法正林の考え方を批判し,非皆伐施業,混交林化,異齢林化によって,土壌も含めた森林を一個の生命体(有機体)としてとらえることを主張した。日本には発表の5年後の1927(昭和2)年に紹介され,1984(昭和59)年に新訳著書が発刊されている。日本では長伐期施業を目指す林業者の施業方針に影響をあたえたが,他国における恒続林思想がどのように現代の森林管理政策に影響をもたらしたかは整理されていない。報告では,文献調査を基に,ドイツの合自然的林業やイギリスのContinuous Cover Forestry(CCF)などに恒続林思想がいかに引き継がれているかを紹介する。

107 中國地方の森林組合における「山の神」祭行事の現状と近隣地域との様式の比較
○西川希一(鹿大農),枚田邦宏,奥山洋一郎 これまで,主に民俗学の観点から,山村地域で生活を営んでいた人々の習慣・習俗が記録され,その中には,通称「山の神」と呼ばれる祭行事に関する記述も存在しており,「山の神」が日々の営みや他の祭行事と結びついていたことが分かっている(堀田 1966)。時代は下がり,現在では木材生産の役割のほとんどは山村に暮らす人々から離れ素材生産業者が担っているが,一方で現在でも,素材生産を担う人々の間ではある特定の期日に作業の安全祈願や日々の恵への感謝として,「山の神」を行っていることが知られている(栁田 2016,西川 2021,2022)。本発表では,中国地方の森林組合を対象に「山の神」祭行事について電話調査を行い,「山の神」祭行事の呼称や開催日などから地域的な特徴を考察する。また,これまでに調査を行ってきた九州・四国地方の結果と合わせ,「山の神」祭行事の様式の境界について考察する。

108 南九州三県(鹿児島・宮崎・熊本)における大径材の径級別取引材積量の推移
○石塚敬人(鹿大農),枚田邦宏,奥山洋一郎 近年,森林において,当初の予定通りに伐採が行われなかったことや,やむを得ず伐期を延長したことにより,伐採適齢期を過ぎた「大径材」が増加しつつある。これまでの大径材に関わる問題というと,製材における歩留まりに関することや,付加価値をどのようにつけるかといった議論が中心であり,実際に大径材の取引材積量がどのように変化してきたのか,丸太価格がどのように推移したのかといったことは十分に明らかにされていない。そこで本発表においては,スギ丸太(3mと4m)材の末口直径30cm上を大径材とし,大径材問題が浮上し始めた2000(平成12)年~現在に至るまで,南九州三県(鹿児島・宮崎・熊本)の森林組合所管の丸太市場において,スギ大径材の径級別の取引材積量と丸太価格がどのように推移してきたかを分析することによって,取引市場における大径材の現状を明らかにし,今後の大径材問題の方策の一助とする。

109 鹿児島県における外国人林業労働者導入の可能性及び意義
○古里孝志(鹿大農),枚田邦宏,奥山洋一郎 日本国内における生産年齢人口が減少傾向であることから,多くの産業で外国人労働者の受け入れが進められている。事例は少ないものの林業においても同様の動きが近年活発になっている。2019年には技能実習生の受け入れに不可欠な技能検定制度の整備を目的とした林業技能向上センターが設立され,数年後には目標の実現が予想されることから,今後更に林業における外国人労働者の受け入れの動きは加速すると考える。今回は先行研究から日本国内の林業における外国人労働者の受け入れに関する動きを整理する。また,鹿児島県内の他産業における外国人労働者の受け入れ状況及び鹿児島県内の林業関連団体への調査を通して,同県内における外国人労働者の受け入れの可能性,課題及びその意義について考察を行う。

110 人間社会と密着した野生動物管理の現状 ~春日大社(奈良公園)の対応事例~
○寺下文貴(鹿大農),枚田邦宏,奥山洋一郎 日本国内の林業被害において,シカによる被害は減退を見せず,造林地のみならず国立公園等にまでその被害域を広げている。また,シカによる被害は森林・林業に限られたものではなく,農業もその域を外れない。本報告は春日大社(奈良公園)周辺区域における,シカによる多様な人間生活への影響に着目し,先行研究をレビューすることによって被害・影響状況やそれへの補償状況等を把握することを主内容とする。春日大社周辺の「奈良のシカ」は人間との共存を前提とした特殊な条件下で管理がなされている。そのため一般的なシカ害の解決には直接的には繋がらないが,管理手法や被害後の経済的対応などにおいて,行政や土地所有者,農家,シカ管理関係者など様々な立場からの主張,解決案を参照し,活かせる点は存在すると考える。

111 林業大学校による新規狩猟者育成の可能性
○岩野純奈(九大農),藤原敬大,佐藤宣子 近年シカによる林業被害が深刻であり,若手林業技術者を育成する林業大学校においても,鳥獣害対策や狩猟免許取得を単位に含めることが多い。しかし,授業の内容や狩猟免許取得状況についての研究はない。そこで本研究では,捕獲の担い手としての狩猟免許保持者数が高齢化傾向にあるなか,林業大学校が新規狩猟者獲得もしくは狩猟技術継承の場になり得るかを明らかにすることを目的とした。研究方法は,24の林業大学校のHP閲覧,電話調査,対面調査によって狩猟関係授業の位置づけと講義内容について収集した。その結果,調査対象26学科のうち15学科で狩猟免許が取得可能であること,東北地方では0であるなど地域差があることが示唆された。また,狩猟関係の授業が充実しているくまもと林業大学校では,聞き取り調査の結果,若手農家を中心に組織された「くまもと☆農家ハンター」を講師に招き,ICT利用を含む実践的な講習を行っていることが明らかになった。

112 猪肉の個人消費者の居住地履歴と猪肉の摂食経験 ―大分県内の食肉処理施設からの流通を事例に―
○古賀裕基(九大院地球社会),百村帝彦 近年,日本では捕殺されたイノシシを猪肉として利活用しようという動きがみられる。猪肉をはじめ,ジビエ利活用では流通基盤の未整備が問題点として指摘されている。流通基盤を整備するためには,流通の出口となる消費者についての把握が必要である。猪肉消費者が形成される為には,(1)猪肉を食べる機会を得て,(2)美味しいと感じる肉や料理に出会う,という経験が不可欠である。日本での猪肉食文化や,適切に処理・調理された肉が食べられるか否かについては地域性があると考えられることから,消費者の居住地履歴には法則性があると推察できる。そこで本研究では,食肉処理施設の協力のもと,一定回数以上猪肉を購入している消費者に対して居住地履歴を問う質問紙調査を行い,安定的に猪肉を購入する消費者に見られる,居住地履歴および各居住地での猪肉の摂食経験における法則性を解明する。

113 木造文化財建造物の修理・修復用材調達に関する考察―重要文化財の江藤家住宅を事例にー
○小川真穂(九大農),宮野岳明,藤原敬大,佐藤宣子 日本には多くの国指定重要文化財建造物があり,そのほとんどが木造である。これら木造文化財建造物は経年によって腐朽したり破損したりするため,定期的な保存修理を行うことでその姿を現在まで保っている。さらに,地震や豪雨などの自然災害や火災などで被災した場合は,大規模修復が必要となる。しかし,文化建造物の修理・修復をする際に必要となる高品質な木材は,近年,生産量が年々減少しており,現在安定的な供給が困難となっている。このような状況に対し,木造文化財建造物の修理・修復に用いられた材木の樹種・径級・長さ等を明らかにし,将来の修理用木材の需要に備えておくことが重要である。本研究では,2016年熊本地震によって被災した国指定重要文化財(2006年1月指定)の江藤家住宅(熊本県大津町)を対象とし,修復工事で使用した木材の種類や材質,入手方法を明らかにすることで,今後の修理・修復用材の調達について考察する。

114 薩摩藩の挿し木造林の推進
○萩原陸渡(鹿大農),奥山洋一郎,枚田邦宏 江戸時代の薩摩藩は慢性的な財政難に陥っており,更に農業に適さない鹿児島特有の地形もあって農業による財政の再建を図ることは難しかった。そこで薩摩藩は商品作物の栽培や樹木の植林を推進することで財政改革を図った。その具体的なものとして人別差杉があり,これは武士と農民に毎年5本のスギ等の挿し木をさせるという薩摩藩の政策である。人別差杉は1626年から始まって年々植える本数は増やされ1779年にその本数は毎年25本となった。これは挿し木の普及という観点から見ると非常に大きいものであったと思われる。

115 山村に残る口伝に関する研究
○和智愛加里(鹿大農),枚田邦宏,奥山洋一郎 世の中には,失われかけている技術や経験を保存しようとする動きがある。どのように手を動かすのか,なぜその職に就こうと思ったか,技術はどのように伝えられてきたのか。しかし,その一方で御伽噺のような非現実的な内容や,科学的根拠がない内容でもそのコミュニティ内では長年守られてきた規則や習慣がある。それら集め,記録することで,自然の中で暮らし利用してきた人々の知恵や思いを推察することができる。本研究では林業に携わってきた人々に取材をすることで,紙面などの記録に残っていない口伝を収集し,口伝の持つ意味を考察する。調査によって得られた内容は,山の神に関する内容,験担ぎ,一般的な内容など分類し,口伝の広がりと広がった理由について検討する。

116 Tourists-perceived Recreational Value of Urban Forestry During the COVID-19 Pandemic - Take Shanghai Sheshan National Forest Park as an Example
○ZHANG YING(KyushuUniversityISGS),Hyakumura Kimihiko As an integral part of urban ecosystem, the value of urban forestry as a necessity of life is once again affirmed in the context of COVID-19 pandemic. The overall goal of this research is to find the impact of COVID-19 on tourists’ recreational activities in urban forestry and identify the main factors affecting their recreational value of urban forestry.This research takes national forest park and its recreational visitors as research objects. A fieldwork has been carried out in Shanghai Sheshan National Forest Park, a typical representative of Shanghai urban forestry. A questionnaire survey with a total of 207 participants has been conducted, both Internet-based and face-to-face. This questionnaire grasps tourists’ a) value orientation of forestry and recreational demand, b) behavioral characteristics and c) perception evaluation and overall satisfaction. This research found that people’s utilization of forest parks has changed under the influence of pandemic, like the frequency of residents approaching urban forestry increased after the COVID-19. Urban forestry helps relieve the pandemic-related psychological pressure, like frustration, anxiety and tension. By visiting certain urban forestry, tourists perceive a satisfactory recreational value.

117 鹿児島県の小学校における森林教育の実践事例
○田邉智行(鹿大農),枚田邦宏,奥山洋一郎 日本が森林資源の成熟を迎える状況において,循環資源であると同時に炭素の長時間の貯蔵を行う木材の利用を促進することは,2050年カーボンニュートラルの実現に重要である。その一方で,令和元年度に行われた内閣府の森林と生活に関する世論調査では,若年層ほど木材の利用に対する積極性が低くなっている。加えて,木材を利用すべきでないと思う人の一番多い理由は「森林破壊に繋がる印象があるため」であり,この回答は若年層ほど多いに傾向があった。このような状況の中,自然と人との関わりを学び持続可能な人材育成を目指す「森林教育」の推進を図ることが小学校で必要であると考える。そこで本研究では,鹿児島県内の小学校で行われている森林教育の普及と充実することを目的とし,森林教育が行われた経緯と活動内容の把握を行う。

118 森林空間におけるVRカメラを用いた景観分析手法の提案
○大津敬太(鹿大農),奥山洋一郎,枚田邦宏 本研究の目的は,VRカメラとも呼ばれる全天球カメラを用いて,森林空間における歩行者が享受しているシークエンス景観を定量化することである。なお,本研究では森林景観を構成する複雑な構成要素の一つである「木漏れ日」を指標として分析を行った。 これまで森林景観は「暗い?明るい」など定性的に語られることが多く,分析手法に関してもSD法やPOMSといった対象者の主観的な評価が多い傾向にあった。 森林景観の木漏れ日に着目した研究では木漏れ日のある森林散策路内の静止画を被験者に呈示し,生理的効果,主観評価を明らかにした事例があるが,呈示する静止画の撮影の際の向きや画角等に大きく影響を受けるものであると考えられる。 以上を踏まえて,本研究ではVRカメラを用いて森林内を撮影した。その結果,歩行者の視点から全方位の視覚情報を分析することができ,実空間に近い形で木漏れ日の割合とその個数を数値として定量的に記述することができた。

119 動物園と獣肉処理施設からみた屠体給餌の課題
○奥山洋一郎(鹿大農),万田拓海,御田成顕,枚田邦宏 野生鳥獣による被害問題が深刻化する中で,駆除された野生鳥獣を利活用することは重要な課題である。しかし,その利活用は進んでおらず,利用率1割という現状では,期待されているジビエ普及を大幅に増やすことは現実的ではない。そこで本研究では,新たな取り組みとして動物園における野生鳥獣肉の餌としての利用=屠体給餌に着目した。動物園で屠体給餌を行うことで,新たな需要を生み出すことが可能であり,来園者に対する獣害問題に対する教育・普及効果も期待できる。屠体給餌を取り巻く課題,新規参入の意向,実施にあたっての障壁,解決案について獣肉処理施設と動物園に対して調査を実施した。調査対象は,九州内に存在する大型肉食獣を飼育している動物園9園と獣肉処理施設42カ所である。各施設に対して質問紙を配布して,回答はFAX,メール,電話インタビューで回収した。

120 森林所有者の施業委託先の選択経緯と満足度 ‐熊本県阿蘇地域における所有者アンケートの比較‐
○平山智貴(九大院生資環),佐藤宣子,久保山裕史,都築伸行 令和3年度森林・林業白書によると,令和2年の全国における植林,下刈等の受託面積に占める森林組合の割合は約5割であり,森林整備の中心的な担い手となっている。しかし近年民間事業体による施業集約化や経営受託の取組も進められ,既存の森林関係セクターの役割を補完する形のNPO法人に着目した清水ら(2016)は,多様な主体との連携の中でNPO法人の新たな可能性を言及している。熊本県阿蘇地域で活動するNPO法人ふるさと創生(以下,NPO創生)は森林所有者から施業委託を受け森林経営計画の策定や集約化を進めており,2021年時点で森林経営計画樹立面積は2,125haとNPO創生が活動開始して約10年で面積は30倍以上となっている。本研究では,NPO創生と同地域を管轄する阿蘇森林組合それぞれに施業委託を行っている森林所有者を対象にアンケート調査を実施し,委託に至る経緯や現状の満足度など比較分析によって明らかになったことを報告する。

121 地域の林業事情に即した林業労働人材の確保と林業大学校の役割
○大西布綺(鹿大農),枚田邦宏,奥山洋一郎 近年全国各地で林業の就業前教育機関である林業大学校の設置が相次ぎ,林業大学校を通じて林業へ就業する人が増えている。2013 年には林業大学校の学生を支援する緑の青年就業準備給付金事業が始まるなど,林業大学校は林業労働の新たな担い手を育成する場として注目されている。三木(2020)は全国の林業大学校を網羅的に調査し,農大型と研修所型の大きく2種類に分類できること,1年制の林業大学校が出来たことにより既卒者が進学しやすくなったことを指摘している。本研究では林業大学校のスタッフへの聞き取り調査をもとに,地域の林業労働の状況を踏まえて今後の林業大学校のあり方を考察する。林業大学校の新設と多様化が進む中,地域の実情や業界のニーズに合った人材育成の方針とそれに基づいたカリキュラムの必要性を検討する。 引用:三木敦朗「林業大学校の多様性と意義」木材情報2020年9月号

122 大学演習林における森林認証取得の現状と課題 -鹿児島大学農学部附属高隈演習林を事例として-
○内原浩之(鹿大農),芦原誠一,宿利原恵,井倉洋二,牧野耕輔 国際的な違法伐採,地球温暖化防止対策としての森林の役割,1992地球サミットでの森林劣化問題に対する議論などを契機に,持続可能な森林経営の重要性が増し,独立した第三者機関による森林認証制度も本格化してきた。森林認証制度は, FSC認証とPEFC認証の二つを中心に,2022年現在において,世界の森林の約13%が何らかの森林認証を受けている。 鹿児島大学農学部附属高隈演習林は,1909年に林学教育・研究の場として設置されて以来,人工林の造成を行っており,年間1,500~2,000?の素材を生産している。森林管理・経営の持続性は大学演習林にとっても重要であることや,公共建築物等に認証材が使用されはじめるなどの社会的要望の高まりを受け,所有面積(3,068ha)全域を対象にSGEC認証取得に向けて取り組んだ。認証取得に至るまでの過程は,森林管理に係る各種書類整理,環境抵抗の低いオイル等の使用促進等,従来からの森林管理体制を再検討する機会となった。

123 コミュニティ林における持続的利用と管理―久留米市田主丸財産区の事例から
○長濱和代(日経大) 旧田主丸町では3つの財産区が統合され,旧市区町村に存在している森林資産の処分権を残す地方公共団体として,久留米市田主丸財産区が成立した。本財産区で議長を務めるY氏との非構造的面談と 資料等から,地域の林地における持続的利用と管理の実態について明らかにした。 Y氏は森林組合副会長,製材所経営者,および森林所有者として,財産区は本来地域の人たちにとってプラスの資産価値をもたらし,財産価値から得た収益を地域に還元してすべきと考える。700haを越える財産区の林地の主たる樹種は手入れされたスギ(人工林)である。Y氏らは京都議定書後に提案されたカーボンオフセットに注目し,伐採後の森林の成長量を数値化することによりJ-クレジット制度への申請を提案,12年前に「かっぱの森J-クレジット」を誕生させた。またコミュニティ林の利用として,本学との森林環境教育の実践を今年度内に予定しており,福岡県からも期待をされている。

124 中国における森林認証の現状と課題 ?中国FSC森林認証のCAR分析から?
○馮曉涵(九大地球社会),百村帝彦 森林認証制度は森林管理認証(FM認証)と管理の連鎖認証(CoC認証)を含め,第三者機関が審査を行う制度である。森林の持続可能性が求められる中,森林認証制度は持続可能な森林経営の達成に向けて,その環境的,経済的,社会的の貢献が世界中に認められている。中国では,森林認証制度が導入されて以来,その重要性を認識し,森林認証が中国において持続可能な森林経営を実現する手段として期待されて,森林認証に関する研究も進んでいる。しかし,既存研究は文献からの論理的概観的な研究が多く,データによる客観的に分析する研究が少ない。 本研究では,中国全国のFSC(森林管理協議会)による認証取得者の年次審査報告書に記載されたCAR(Corrective Action Request,不適合事項)の情報を収集し,CARデータを統計・分析し,中国における森林認証の現状と問題点を客観的に把握する。